2023.4.28

すべての経験を災害対策への学びに―KDDIの思い

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「通信の影響・責任が増している時代に、いかに迅速に通信を復旧できるか。そのためにできる災害対策を日々検討し、アップデートして訓練を行っています」

こう話すのは、KDDIで災害対策時の復旧統制をとるネットワーク強靭化推進室長(当時)の水田秀之。

KDDI株式会社 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 運用管理部 ネットワーク強靭化推進室長(当時)水田秀之KDDI株式会社 技術統括本部 エンジニアリング推進本部 運用管理部 ネットワーク強靭化推進室長(当時)水田秀之

「スマートフォンが一人一台の時代になった今、緊急通報もスマートフォンを使うのが当たり前になっています。通信が途切れてしまうと人命救助にも影響を及ぼすので、責任の大きさを感じています」

パートナーとの連携なしに「迅速な通信の復旧」はない

一刻も早い通信の復旧に欠かせないのが、外部パートナーとの協力です。災害による崖崩れや倒木などによって道路が寸断されてしまった場合には、自衛隊や自治体、関連省庁との連携が欠かせません。

「被災地では多くの場合、私たちだけでは到底たどりつけないほど道が寸断されています。自衛隊や海上保安庁、自治体の方々といったパートナーの協力なしに、こうした場所に復旧機材である移動基地局を運ぶことはできません。最新の被害状況を迅速に把握し、陸や海、空からアプローチができるのも、パートナーの皆さまのお力があってこそ。協力体制がしっかりできていることで迅速な通信復旧が可能になるのです」

いざという時にスムーズな連携ができるようにするためにも、実際の災害を想定した災害対策訓練はとても重要な位置づけです。災害対策も日々進化するため、社内はもとより、外部パートナーとのこまめな情報共有と訓練のアップデートが欠かせません。

自衛隊のトラックからKDDIの復旧機材をおろす様子自衛隊のトラックからKDDIの復旧機材をおろす様子

「災害対策訓練というと形骸化が懸念されることもありますが、さまざまな災害想定、進化する対策にいつでもスムーズに対応できるよう、関係者と連携し、議論しながら準備し訓練するため、そのようなことはありません」

一刻も早い通信復旧のために、最新の技術を活用

これからの災害対策はどのように進化していくのか。大きく2つの方向性を水田は示します。

1つは新たな技術を使って、これまでの手法をより良いものにしていくことです。例えば、通信を早く復旧させるためには、通信が途絶えた場所に移動基地局を運ぶ必要がありますが、この機材が小型化すればするほど、これまで運べなかった場所にも運びやすくなります。小型・軽量化に役立つ技術を使うことで、手法をより洗練させていくことを目指します。

もう1つは災害対策そのもののIT化です。現状の災害対策は「ひと」と「もの」を大量に投入することで迅速な対応を図っていますが、ITを活用したシステム化を進めることで、より高度で効率の良い災害対策の実現を目指します。

そして最終的には『災害が起きても止まらない通信』を目指すと水田は意気込みます。

「どのような状態であっても通信がつながる、というのが理想だと思っています。昨今では低軌道衛星を使った『Starlink』のようなインターネット通信サービスも登場しており、これまでの陸・海・空からの復旧アプローチに『宇宙』を加えることで、これからの災害対策の可能性が大きく広がっていくはずです」