社会

子どもや若年世代とともに考える理想の「未来の都市」―大阪・関西万博への出展に向けた意見収集活動

KDDIは2025年日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)の未来社会ショーケース事業「未来の都市」において、日立製作所との共同展示でKDDI VISION 2030にある「誰もが思いを実現できる社会」の具現化を目指しています。そのために、さまざまな生活者の方とのワークショップを通じ、「理想の未来」についての意見収集活動を行っています。

その意義やワークショップを通して得た価値、その先の未来への思いなどを、KDDIの担当者に聞きました。

● 企業目線の提案ではなく、一人ひとりの思いをすくい取った展示へ

KDDIは、2025年4月に開幕する大阪・関西万博の未来社会ショーケース事業「フューチャーライフ万博・未来の都市」にプラチナパートナーとして協賛し、「Society 5.0 *1 と未来の都市」のエリアで株式会社日立製作所(以下、日立製作所)とともに共同展示を行います。

*1:政府が提唱する新しい社会のあり方。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く「人間中心の社会」を指します。Society 5.0では、サイバー空間とフィジカル(物理)空間を高度に融合させて、Society 4.0では十分ではなかった知識や情報を共有し、さまざまな社会課題解決と経済発展との両立の実現を目指します。

展示の土台となるのが、2023年度にKDDIが行った「意見収集活動」です。KDDIでは、子どもや若年世代を未来の担い手である「未来人財」ととらえ、彼らが考える「理想の未来」への意見や思いを反映させ、「未来の都市」の展示を表現しようとしています。

生活者(関西大学の学生)とのワークショップの様子生活者(関西大学の学生)とのワークショップの様子
意見収集活動ワークショップ参加者意見収集活動ワークショップ参加者

これまでの万博では出展企業が自ら未来像を描き、発信することが一般的でしたが、あえて一般生活者から意見を収集する理由について、展示会場の企画を担当するKDDI ブランドマネジメント部の真銅 守は次のように説明します。

KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 真銅 守KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 真銅 守

「今回の展示では、『誰もが思いを実現できる社会』を、来場者のみなさんの意思や思いをくみ取って表現したいと考えています。社会課題は大きな言葉で一括りにされていますが、その実態は幅広く、例えば『少子高齢化』1つをとっても生活者一人ひとりが自分の目線で課題感や思いを抱いています。その多様性を取り入れるためには、我々企業の目線で未来を描くのではなく、一人ひとりの声を集めて描くことが重要だと考えました」(真銅)

● ワークショップの目的は意見収集と未来人財の支援

各ワークショップの企画・実行を担当したKDDI ブランドマネジメント部 大阪・関西万博準備室の大畠亮介はこう話します。

KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 大阪・関西万博準備室 大畠亮介KDDI株式会社 渉外・コミュニケーション統括本部 ブランド・コミュニケーション本部 ブランドマネジメント部 大阪・関西万博準備室 大畠亮介

「今回は、社会課題を考える切り口として、SDGsのゴールを切り口に課題を設定しました。SDGsを議論のフレームに選んだのは、それを達成するための戦略としてSociety 5.0が位置付けられており、子どもたちも学校で教わって共通言語となっているからです」(大畠)

小学生を対象とするワークショップでは、自分たちが考えた未来の絵のプレゼンを行いました。各グループの中にはKDDIの社員が参加し子どもたちの目線に寄り添って議論をサポートしました。

中学生のワークショップでは、擬人化された動物たちが躍動する墨絵の国宝『鳥獣戯画』の表現を用いて発想をイメージ化しました。

未来の絵を描く子供たち © 2024 Nowadays Cho-ju-Giga Art Project / KDDI / KCJ GROUP未来の絵を描く子供たち © 2024 Nowadays Cho-ju-Giga Art Project / KDDI / KCJ GROUP

「実は、このワークショップには、万博展示のための意見収集だけでなく、その過程を通じて、『未来人財の支援』にも貢献したいという思いがありました。子どもたちのワークショップで大人との対話を設けたのは、そのためでもあります」(大畠)

一方、関西大学、KDDI総合研究所、情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)で行われたワークショップでは、KDDI DIGITAL GATE *2 のファシリテートのもとさまざまな意見交換を行い、各個人が描く近未来を新聞で表現するといった形で、それぞれの思いや意見を収集しました。

*2:KDDI DIGITAL GATE
アイデアの仮設具体化から検証・改善までのプロセスを通して事業グロースまで視野に入れた事業創出やDXの推進をサポートするKDDIのサービス機関
KDDI DIGITAL GATE | KDDI株式会社

CIAJメンバーとのワークショップCIAJメンバーとのワークショップ

このように実施した各ワークショップから収集した、未来を考える生活者一人ひとりの発想の中には、想像を越えるものもあったと振り返ります。

「大学生からは、政治家がマニフェストで示した社会をメタバースの世界で表現することによって、政治への参加意識を高めようとするアイデアが生まれました。政治への無関心に対して自身も課題感を持つ、大学生ならではの視点で、新鮮な発想であったと思います」(真銅)

政治への無関心に対して課題感を持つ関西大学の学生たち政治への無関心に対して課題感を持つ関西大学の学生たち
KDDI総合研究所メンバーとのワークショップKDDI総合研究所メンバーとのワークショップ

● 意見収集活動のワークショップで得た成果

大畠は「それぞれの立場によって見える景色は異なるものであり、等身大の課題と向き合った多様な意見を収集できた」と評価した上で、未来人財支援の観点での成果も大きかったと振り返ります。

「特に子どもや学生たちにとっては、未来に向けて意見を発露し、自分たち自身が未来に関与できるのだという気付きを得られる場にできたのではないかと感じています。ある大学生は、アルバイトでフードロスを目の当たりにしながら、なかなかアクションに移せないモヤモヤ感を抱えていました。その背中を押して視線を上げる手助けができたのも成果かと思います。ワークショップを通して、子どもたちはさまざまな視点や意見を持つ人たちとの対話を楽しみ、自己成長のために必要だと感じているのではないでしょうか。私たちは今後もいろいろな人たちに対して、このような場を提供していくことが未来人財を育てていくうえで大切なのだと気付きました」(大畠)

考えた未来を発表する中学生 © 2024 Nowadays Cho-ju-Giga Art Project / KDDI / KCJ GROUP考えた未来を発表する中学生 © 2024 Nowadays Cho-ju-Giga Art Project / KDDI / KCJ GROUP

一方で社会人からは、「実現可否を問わず発言できたことがうれしかった」「未来を語ることに、とてもワクワクした」「普段は接することのない人の視点を知れて楽しかった」といった感想が寄せられました。

● 2025年、そして2030年への思い

2025年4月の大阪・関西万博開幕まで1年を切りましたが、KDDIは今後も引き続きさまざまな方たちの意見や思いを収集しながら展示への反映を進めていきます。最後に、万博とさらに先の2030年以降に向けて、2人は次のように展望と思いを語ります。

「理想の未来を議論する際に、社会課題解決のために、真剣に議論する様子から2030年に向けて前進している手応えを得ました。それをしっかり受け止め、2025年、2030年と形にしていかなければいけないのだと、また気持ちが引き締まりました」(大畠)

「社会課題の解決は企業1社の技術だけではなく、さまざまな企業との連携によって、実現されていくものだと思います。「未来の都市」では企業・組織や業界の垣根を越えて、さまざまな知見やアイデアを掛け合わせて生まれたデジタルイノベーションや、新たな価値を実証します。来場者の皆さまには、さまざまな問いを投げかけ、未来の都市像を共に考えていただく機会を提供していきたいと思っています」(真銅)

KDDIは、今回の意見収集活動を通じて得られた「理想の未来」への多くの意見や思いを大阪・関西万博の展示で表現し、KDDI VISION 2030で掲げている、「誰もが思いを実現できる社会」に向けて前進していきます。そして、今回の出展を1つのきっかけにして、今後も生活者目線での社会課題解決と未来人財の支援・育成に取り組んでまいります。

中学生とのワークショップ © KDDI / KCJ GROUP中学生とのワークショップ © KDDI / KCJ GROUP

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