KDDI版ジョブ型人事制度による変革がこれからを支える人財を育む
● 人財ファースト企業への変革に向けた「KDDI版ジョブ型人事制度」の導入
KDDIは中期経営戦略(2022-2024年度)の中で「人財ファースト企業への変革」を掲げています。これは、「新人事制度の浸透」「KDDI版ジョブ型人事制度によるプロ人財の育成」「社員エンゲージメントの向上」という三位一体改革の推進により実現を目指すものです。「KDDI版ジョブ型人事制度」については、2020年8月に導入されましたが、従来の人事制度から大きく様変わりした人事制度を導入した背景には、KDDIが取り組んでいる事業領域の拡大が影響しています。
KDDI 人事企画部 部長の長野修平は「KDDIが今後、多様な新事業へ業務領域を拡大し、挑戦していくには社内外のさまざまな専門性を持つ優秀な人財を惹きつける必要があります。新たな事業で活躍できる人財を外部から採用したり、社内で育成したりするためには、新たな人事制度の導入が必要でした」と説明します。
人財ファースト企業を掲げるKDDIには、「人財こそが最も重要な資本」という強い意識があります。「プロ人財」とも呼ばれる優秀な人財の確保や育成を図るために新しい人事制度は欠かせないものでした。また、社内の意識改革においても新制度への変革が必要でした。
「KDDIには創業当時からチャレンジ精神を大切にする文化があり、その文化を生かし、通信を基盤にして事業を拡大してきた歴史があります。しかし創業から20余年が過ぎ社内の風土が変化していく中で、若手社員を中心にして挑戦する意識の低下が見られ、社内人財の意識変革も喫緊の課題でした」
● KDDIならではのジョブ型人事制度とは
多くの日本企業が採用している年功的な「メンバーシップ型人事制度」に対し、欧米企業で多く採用されているのが「ジョブ型人事制度」です。社員のジョブとスキルを明確にし、専門性を生かした働き方を推し進め、その能力や成果によって評価を決定する人事制度です。
KDDI版ジョブ型人事制度についても、業務とスキルを明確に定義し、社員の実力に基づいた評価に伴う報酬が与えられます。最大の目的は、社員一人一人の成長によって組織と企業の成長を実現することです。その全体像は、「KDDI版ジョブディスクリプション」を基軸として「自律的なキャリア形成」「評価制度」「報酬制度」が連動して、構築されています。
そしてKDDI版ジョブ型人事制度には、「KDDIらしさ」が加味されているのが大きな特徴です。長野はその特徴について、「KDDIの広い事業領域を活用して多様な成長機会を提供するとともに、専門能力に加えてKDDIの企業理念に沿って組織を成功に導けるような『人間力』の高さも評価されます。こういったKDDIらしさを大切にしながら、ジョブ型の長所を取り入れています」と話します。
またKDDI版ジョブ型人事制度では従来型の管理職を廃止して、マネジメント(リーダー)職とエキスパート職による「経営基幹職」が設けられました。また新卒採用においても、入社後にさまざま経験を積んでキャリアを築く「OPENコース」と、自身のスキルを生かして初期配属領域を定める「WILLコース」を希望できるようになっています。
「新制度の導入に向けて、当初は社員の方から戸惑いの声も聞かれました。そこで、キャリア採用や新卒採用の社員の方から新制度を適用させていき、既存の社員の方についてはミーティングや説明会を繰り返し、理解を深めながら、段階的に新制度が根付く期間を十分につくった上で、2022年4月の完全移行に至りました」
● 社外からも評価されるKDDI版ジョブ型人事制度
そのような変革の取り組みが高く評価され、KDDI版ジョブ型人事制度は「HR Transformation of The Year 2022」(主催:「HRX of The Year」実行委員会)の最優秀賞を受賞しました。社外からも広く関心を集めており、国内で先進的にジョブ型人事制度に取り組んだモデルケースとして、同様の人事制度を検討している他業種の企業からも多く問い合わせをいただいています。
「新制度へ完全に移行していますが、四半期ごとにエンゲージメントサーベイを行って社内での従業員満足度を計測しています。若手社員は右肩上がりで自身の成長を実感できているという結果が得られています。今後は若手社員に限らず全社員が、より自律的にキャリア形成を行っていける機会を提案していきます。KDDIは、『つなぐチカラを進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる』ことをビジョンとして掲げていますが、今後もこの制度によって成長していく人財の力で、そのビジョンを成し遂げられる企業風土、世界観を構築していきます」