2023.3.2
KDDIのIoTで、若い世代が魅力を感じる水産業へ
勘や経験をデジタルに置き換え、形式知化する
サステナビリティ経営を掲げるKDDIでは、社会が持続的に発展するには地域が発展することが欠かせないと考えています。東日本大震災後に設けた復興支援室の取り組みを全国展開するために、2017年に地方創生支援室を設置。2022年からは地域共創室と名称を変え、地方自治体や大学などとともに地域の農業、水産業、観光業などで共創の取り組みを行っています。
「水産業における地域共創は、東日本大震災の津波被害を受けた港の漁師さんが手掛ける定置網の漁獲量予測が最初です。定置網は、水温・波高など多様な条件によって漁獲量に差がでます。そこで、漁師さんの経験則をデータに置き換えることで、デジタル的に漁獲量予測が可能になると考え、実際の漁獲量と海中データの相関性を過去の実績などと比較して分析できるようにしました。予測可能になることで、無駄な出漁や準備を減らせるのではないかと取り組みました」と振り返るのは、地域共創室室長の齋藤 匠です。
その後もKDDIでは、福井県小浜市でのサバの養殖、徳島県海陽町でのカキの養殖、長崎県五島市でのヒラメの陸上養殖などの共創に取り組んできました。
では、なぜ養殖に注目しているのでしょうか。
「人工的な環境下で魚を育てる養殖は、センサーなどの技術とも親和性が高く、データを基にして水温や餌の量を調整するなど、次のアクションを起こしやすいのです。KDDIが得意とする通信やデジタル技術を活用して、漁業就労者の方々の経験や勘を形式知化し、スマート漁業を実現することで収益の安定化や水産業の魅力がより高まることで、若い世代などの新しい人材の獲得につながることが私たちの願いです」(齋藤)
水産事業者の利益最大化をサポートしたい
また、長崎県五島市でのプロジェクトを担当する地域共創室の加藤英夫は、「効率化だけではなく、水産業の価値を高めて利益を最大化できるようにすることが重要」だと言い、こう続けます。「商品である魚の価値を高め、地域が誇るブランドをつくりだす。そうすることで、水産業をもっと魅力的なものにして、水産関係者全体に笑顔があふれるようにしたいのです。新しい取り組みにはリスクもありますが、そこに目を向けるのではなく、デジタルを活用した『新しい水産業』の具現化こそが目標です」(加藤)
そのほか地域共創室では、海の環境問題への取り組みとして、三重県鳥羽市でブルーカーボンの取り組み*1も開始しました。ブルーカーボンは、ノリやワカメといった海藻や海草などによって海中に取り込まれる炭素のことで、二酸化炭素吸収源の新たな選択肢として注目されています。
「世界の漁獲量は増えているにもかかわらず、日本だけが減っているというのが現実です。また、世界的には人口増大による食糧危機もとりざたされています。その意味で、海洋保護や養殖は重要な分野です。これからも地域の方々からヒアリングを重ね、通信を中心とするKDDIだからこそできるアプローチを実践していきたいと考えています」(齋藤)
*1 2021年3月海洋DX推進に向けた連携協定を三重大学、鳥羽商船高等専門学校、三重県水産研究所、鳥羽市、KDDI、KDDI総合研究所にて締結。