2023.08.31

関東大震災が起きた100年前と今、変わらないのは情報の大切さ

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1923(大正12)年9月1日正午2分前に発生した関東大地震(関東大震災)は、南関東から東海地域に及ぶ地域に大きな被害をもたらした巨大な地震でした。今年は関東大震災から100年が経った年にあたります。

関東大震災100年についての思いを三島教授からお話しいただきました。

「地震は100年前も100年後も同じように起きます。これは人間の力では防ぎようがないことです。しかし、人間の力が関与できる部分も実はあります。ひとつは情報の迅速かつ正確な伝達です。100年前の関東大震災直後には、誤った情報(デマ)を多くの人が信じて行動したために、たくさんの方が亡くなりました。
こうした被害の背景にあるのは、地震自体ではなく、情報の中身が自分たちの思いによってねじまげられたことです。この現象は今でも起きることであり、スマホによってより短時間に、より広く拡散する可能性があります。
ただ、スマホをうまく使うことで、正確な情報が迅速に伝えられるという側面もあります。スマホなどのツールがなかったころの避難行動は、自分が目視できる範囲内の情報に強く影響され、たとえば、「あっちは火がなさそうだから行ってみよう」と判断していたものが、今ならスマホがもたらす目視できる範囲を超えた広範囲のローカルな情報を利用して避難行動を選択することが可能です。正しい情報に基づいた合理的な判断ができれば、リスクは低減します。こうした理由から、スマホを利用した防災教育を行うことは意義があると考えています」(三島教授)

防災教育に携わってきた日野も、関東大震災100年に対する思いを話します。

「この講座でもあえてデマの情報を紛れ込ませていて、子ども達はそれをメンバーに伝えるのか伝えないのかを自分自身で判断します。本当の災害時にデマを流してしまったらどれだけ広がってしまうのかを疑似体験しておくことで、災害時に備えることができると考えています。関東大震災から100年経ち、情報の広がり方は大きく変わってきているので、私たち自身がしっかりと考えていかなければなりません。
また、私たちの部門では、KDDIの社会貢献サイト"キボウのカケハシ"*1という災害時に募金ができるサイトを運営しており、国内、海外の災害が発生した際は、お客さまから多くの募金が集まります。皆さんの中で、防災だけでなく、自分ができることをしよう、手を差し伸べようという気持ちが高まっていることを感じます」(日野)

*1 「キボウのカケハシ」は、KDDIが運営する、環境保全や社会貢献のために活動する団体と、応援したい人たちをつなぐサイトです。サイトはこちら

デマを流す人達も、決して悪意でやっているわけではないと三島教授は説明します。
「災害時に発生するデマ情報の多くは、自分が正しいと思って伝えています。善意によるこうした情報の拡散が問題になることもあります。たとえ誤った情報であっても、たくさんの人がその情報を信じて行動すれば、誤った情報を信じて行動する多くの人々の姿や言動が、その情報に信憑性を与えてしまいます。本教材での疑似体験を通して、情報を精査することの大切さや、誤った情報の伝達・拡散が災害時のリスク要因になることを、参加したみなさんに考えていただきたいと思います」(三島教授)

この講座では、自分が得られた情報以外に、他の人からも情報がたくさん入るように作られています。迅速に情報を取捨選択しなければ、避難や救助ができません。講座を修了した高校生達からは、「グループで話し合うことで情報を整理できた」「平常時にシミュレーションできてよかった」との声をいただいています。

スマホデビュー低年齢化に合わせて対象年齢を広げていく

これまで対象を高校生に限定していましたが、講座開設から5年が経ち、スマホ利用者の低年齢化が進んでいます。今後は、この講座の受講対象を中学生、小学生へと広げていきたいと考えています。

2023年8月に小学生親子を対象としたトライアル講座を実施2023年8月に小学生親子を対象としたトライアル講座を実施

「小学生に関しては保護者同伴で来ていただいて、保護者に見守りをしてもらいたいと思っています。保護者はヘルプを頼まれた時だけ必要な支援をする。そうすると、子どもは安心して冒険できます。防災教育にとどまらず、親子の心理的な距離を考えるひとつの機会にもなればと考えています」(三島教授)

「スマホはライフラインのひとつとして重要な役割を担っています。24時間365日繋がるようにすることがKDDIの使命です。この使命を果たすとともに、子ども達もライフラインをうまく使いこなしていけるように、幅広い年代の子ども達へ防災リテラシー教育を進めていきたいと思います」(日野)