for-future

スタートアップへのリスペクトから生まれるオープンイノベーション

KDDIは、組織外の知識や技術を積極的に取り入れ、自社のアセットと掛け合わせることで新規事業創出を目指す「オープンイノベーション」を推進しています。スタートアップを含むパートナー企業との共創を加速させることで、事業成長と社会課題の解決に取り組んでおり、2024年の「イノベーティブ大企業ランキング *1 」では、7年連続の1位を受賞しました。

*1:イノベーティブ大企業ランキングとは、イノベーションリーダーズサミット実行委員会が発表する「スタートアップとの連携を通じたオープンイノベーションに積極的な大企業」の人気ランキング。約1,200社の有望スタートアップ企業を対象に年1回行うアンケート調査に基づいて選出される。

オープンイノベーションに力を注ぎ、スタートアップと共に成長していくことが、企業価値向上と社会の持続的成長につながります。この記事ではKDDIのオープンイノベーションの取り組みを、現場の担当者の思いとともに紹介します。

● スタートアップの活躍がこれからの時代のカギになる

近年、スタートアップの育成・支援に政府や多くの民間企業が力を注いでいます。日本政府は「スタートアップ育成5か年計画」を2022年に決定し、また同年に日本経済団体連合会(経団連)も「スタートアップ躍進ビジョン~10X10Xを目指して」という提言を公表しています。

KDDI BI推進部の一色 望は、「これらはまさに、日本の抱える課題解決にはスタートアップの活躍が必要だと、国が強く意識していることの表れです」と話します。

KDDI オープンイノベーション推進本部 BI推進部 一色 望KDDI オープンイノベーション推進本部 BI推進部 一色 望

KDDIは、コアとなる通信事業を成長させながら、時代のニーズに合わせた新規事業を生み出し続けてきました。そうした新規事業開発の裏には、スタートアップとの協業・共創がありました。変化が早く、多様なニーズへの対応が求められる現代では、自社だけで革新的なビジネスを生み出すことは難しいのが実情です。そのためスタートアップが持つ、迅速な動きができる柔軟さ・適応力と、新しいアイデアなどを生み出す革新性が重要になります。

「KDDIは事業成長を続けながら、社会課題を解決するためには、自社の持っていないアイデアやテクノロジー、人財、リソースを持つスタートアップとのオープンイノベーションが必要だと考えています。そのための取り組みが、『KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)』と『KDDI Open Innovation Fund』です」(一色)

KDDI ∞ LaboのスキームKDDI ∞ Laboのスキーム
KDDI Open Innovation FundのスキームKDDI Open Innovation Fundのスキーム

● 大企業との出会いの場を提供する「KDDI ∞ Labo」

KDDIがスタートアップの育成・支援を本格化させたのは2011年です。KDDI ∞ Laboは事業会社が提供するインキュベーションプログラムとして、日本に誕生しました。北米では同様の取り組みが先行していましたが、日本国内ではまだ黎明期での参入でした。当初はKDDI単独の取り組みでしたが、今では100社の大企業と連携する事業共創プラットフォームへと成長しています。

事業共創プラットフォームとは、スタートアップのアイデアやテクノロジーと、KDDI ∞ Laboに参画する大企業群「パートナー連合」のアセットを連携させて、事業創出や課題解決を実現するための仕組みです。いうなれば、スタートアップファーストの理念の元で運営される「マッチングの場」。入社してから約3年間スタートアップ支援に取り組んできた、KDDI BI推進部の陸田 瑛星はその意義を次のように説明します。

「月に1回、パートナー連合のオフィスをお借りして、スタートアップと大企業の担当者が出会うリアルイベントを開催しています。KDDI ∞ Laboを通じて年間1,900件ほどのマッチングが行われ、すでに共創事例も誕生しています。例えば、ある大企業はアート作品を扱うスタートアップと業務提携し、アートビジネスの新たな市場開拓に取り組んでいます」

KDDI オープンイノベーション推進本部 BI推進部 陸田 瑛星KDDI オープンイノベーション推進本部 BI推進部 陸田 瑛星

スタートアップにとっては、大企業と組むことで、事業規模が一気に拡大し、成功するためのJカーブを描くことができます。また大企業側にとっても、自社では思いつかないアイデアなどの解決策を得ることができるのです。スタートアップファーストで連携することによって最終的には両者にとってwin-winな結果となります。

KDDI ∞ Laboでは、2023年に生成AIの活用支援プログラムを、そして2024年には、宇宙ビジネスを共創するためのプログラム「MUGENLABO UNIVERSE」を新たにスタートしました。前者は生成AIを活用して、パートナー連合の課題解決に挑むスタートアップを支援する取り組みで、後者は民間企業の宇宙事業への参入障壁を下げながら、最終的に地球規模の課題解決を目指す新たな取り組みです。

● 成長と国内外への進出を後押しする「KDDI Open Innovation Fund」

KDDIは2012年に発足させたコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)である「KDDI Open Innovation Fund(KOIF)」によって、国内外のスタートアップのさらなる成長やグローバル進出支援を展開しています。2024年8月時点での運用総額は約400億円。また国内外147社へ出資しており、KDDIグループの持つ顧客基盤や事業に関するノウハウ、5Gなどの強みを生かした共創がKOIFの目指しているゴールです。アーリーステージのスタートアップと積極的にコンタクトを取りながら、出資を展開しています。

「私たちが目指しているのは『ソーシャルインパクト』です。KDDIの事業とのシナジーを通じて、社会の課題を解決し、ワクワクする未来を共に創ることを重視しています。ホットな領域やトレンドは日々移り変わり、受け身の姿勢では出遅れてしまうため、こちらから積極的にお声がけして会いに行くスタンスで開拓しています。また、一昔前まで、大企業とスタートアップの関係性は『ベンダーとクライアントのような関係』が多かったように思います。しかし、私たちはそのような関係ではなく、あるべき姿はパートナー関係だと考えています。常にリスペクトを持ち、スタートアップファーストを意識する。これが事業共創において重要です」(一色)

そうしたリスペクト精神こそが、スタートアップからも評価されてランキング1位を長年維持できている理由ではないかと陸田も語ります。

「お付き合いのあるスタートアップの経営者さまから、別のスタートアップをご紹介いただくこともあります。KDDIが信頼できるパートナーだと業界内で知られていることは嬉しいです。引き続き期待にしっかりお応えし、事業の課題に直面したとき最初に相談する相手として選ばれる存在になることを目指します」

●「GO GLOBAL」―事業共創にはチャレンジが不可欠

オープンイノベーションは、取り組みの90%が失敗し、100回会って1つの話がまとまるかどうかといったような現実があります。「それが当たり前という前提に立ち、次から次へと挑戦し、前を向いて試行錯誤を続けることが重要です。KDDI自身も数えきれないほどの失敗を重ねてきましたが、チャレンジはやめません。チャレンジし続けることでしか、次のコアビジネスの芽は出てこないからです」と一色は説明します。

BI推進部が所属する、オープンイノベーション推進本部における現在のキーワードは「GO GLOBAL」。日本で創業し、国内向けに事業展開してきた企業の次なる飛躍的成長のための海外進出支援にも注力しています。それだけではなく、初めから世界展開を視野に入れて創業するスタートアップへの貢献も加速させていく考えです。

「海外では優秀な学生の就職先としてスタートアップが多く選ばれているだけでなく、自らサービスを立ち上げて起業する学生が少なくありません。KDDIでは、そうした起業家精神(アントレプレナーシップ)を日本にもっと浸透させたいと考えています。東京大学でのアントレプレナーシップ講座はそのための取り組みの一環です」(陸田)

KDDIはこれからも、スタートアップへのリスペクトのもと、スタートアップが成長するための支援と、大企業との共創に向けた仕掛けづくりに取り組みます。そして、スタートアップを含むパートナー企業と共に思いを実現することで、企業と社会の成長を目指していきます。

KDDIトビラの記事カテゴリ

  • X
  • facebook
  • youtube