D&Iに「公平性」を加えDE&Iへ。 多様な人財の活躍を支援・強化してお客さまニーズに応える

KDDIは、2005年から多様性の尊重に取り組んでおり、性別や年齢、バックグラウンドの多様性を高める努力を重ね、「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」を推進し続けてきました。昨今の事業領域拡大に伴って、お客さまのニーズはより多様化・複雑化し、激しく変化しています。そこでKDDIは、多様なお客さまニーズへ柔軟に対応できる環境を整えるため、D&Iに「公平性(エクイティ)」を加え、「DE&I」へフェーズアップしました。

この取り組みを進めることにより、これまで以上に社員一人一人の特性や能力を互いに認識し高め合い、それぞれの活躍が促されることで、お客さまに提供できる価値が最大化できるようになると考えています。誰もが思いを実現できる環境の整備や風土の醸成に向けて、「個々の社員に合わせた支援を行って、公平な土台をつくること」をエクイティとして明文化しています。

KDDIが掲げるDE&Iの取り組み

DE&I実現に向けて、KDDIでは「女性活躍推進」や「育児両立支援」などに取り組んでおり、2023年3月からは意識改革の施策として「DE&I アンコンシャスバイアス研修」を実施しています。

「アンコンシャスバイアス」とは、「無意識の偏ったものの見方」を意味します。自分自身では意識しにくく、そこに偏りがあったとしても、認識していないために気付かない「無意識の偏見」を示しています。アンコンシャスバイアスによる思い込みが、少数派の人を含む全ての社員が持つ個性や強みの発揮を阻んでいないか、その障壁を取り払うために何ができるかを考えることがこの研修の大きな目的です。

KDDIは今後も研修および支援を行うことで、属性だけでなく、経験や専門性等も含めて多様な人財が活躍できる環境づくりを推進していきます。

私に先入観はない、という先入観を捨てよう

KDDIは「なりたい私が、KDDIにいる。」をキャッチコピーに掲げ、2030年までにDE&Iが全社的に浸透することを目指していますが、2025年までははじめの一歩として、「私に先入観はない、という先入観を捨てよう。」というキャッチコピーのもと、アンコンシャスバイアスへの取り組みを進めています。

「KDDIは、中期経営戦略における重要課題の1つとして『人財ファースト企業への変革』を掲げています。もともと企業理念である『KDDIフィロソフィ』や『KDDI行動指針』にはダイバーシティが基本であることや、人権尊重を明記していましたが、現在の中期経営計画では『人財の力』で成長していく企業であることを強く打ち出し、多様な人財の活躍にフォーカスを当てています。それぞれの社員が最大限の力を発揮できる環境がなければ、優秀な人財でも真の力を発揮できないからです」と、KDDI 人事企画部 内海かなめは話します。

KDDI株式会社 コーポレート統括本部 人事本部 人事企画部 副部長 内海かなめ

KDDIのD&Iを「DE&I」へとフェーズアップした背景には、KDDIの事業領域の拡大に伴って、さまざまな領域のプロフェッショナル人財が集う企業に成長したことが1つの要因だといいます。

「従来とは異なる多様なスキルやバックグラウンド、考え方を持つ人財が入社してきます。そういう方たちを尊重し、活かしきることが大事だと考えています。例えば、仕事の進め方ひとつとっても『KDDIではこれが普通』といった思い込みに捉われていると、折角の新しい発想・手法を活かせないかもしれません。違う意見をぶつけ合って新たな価値をつくる。それによってお客さまに、よりよいサービスを届けることができるようになると考えました」

また、もう1つの理由として、マイノリティの方がいた場合、その方たちの気持ちを想像し、思いを馳せることが必要だと感じていたと内海は話します。

「例えば、中途入社者の例で言えば、即戦力として採用しているのだから、このくらい出来て当然だよね、といった思い込みで相手を見てしまうと、相手はプレッシャーを感じ萎縮してしまうかもしれません。異なる環境に慣れるだけでも大変だろうな、といった相手の立場や環境に思いを馳せることができれば、違う接し方ができるのではないでしょうか。そうなれば、優秀な人財が持つ“違い”のよさを活かすことができるようになると思います」

アンコンシャスバイアス研修で“少数派”に思いを馳せる

「DE&I アンコンシャスバイアス研修」はその取り組みの一環です。2022年3月から本部長から研修を開始し、2023年度は部長、グループリーダー層へ拡大して研修を全社的に進めています。

「研修の中では、“少数派”になった経験について思いを馳せてもらうプログラムがあります。本部長、部長といった組織の上層部の社員は普段はルールを作ったり意思決定をする“多数派”ですが、少数派だった時には居心地の悪さや孤独を感じた経験があり、それを思い出しつつパーソナルな話をしてもらいました。自分と同じような思いを少数派の人にさせていないか、そういう部分をケアすることが必要ではないかというコメントが多く聞かれました。研修を終えた感想として、その気付きを話す方は多かったです」

また、KDDIのDE&Iへの取り組みでは、女性活躍推進についても重要視しています。

「KDDIでは要員構成上、女性社員は少数派です。女性は過去、出産などのライフイベントの影響で昇進が遅れる傾向がありましたが、そこにはアンコンシャスバイアスも関係していたのではないでしょうか。出産したら家庭第一にするのが当たり前という価値観の人もいれば、出産しても出来るだけ早く復帰してキャリアを途切れさせたくないという人もいます。普通はこうだ、という思い込みではなく、一人一人の違いを認め、活かす最善の道を探っていけたらと思います。加えて、女性が男性と同じ土俵で活躍するために、スポンサーによる育成制度や育児両立支援といったエクイティ施策でスタートラインを合わせ、女性の活躍を後押ししていきたいと考えています。マイノリティを含む、一人一人の社員をエクイティで支援することをKDDIの風土として醸成していきたいです」

DE&I アンコンシャスバイアス研修の効果と今後への期待

2022年3月、全社的に初めて開催された「DE&I アンコンシャスバイアス研修」。まずは本部長に向けた研修として始まりました。

そこで、多くの気付きを得られたと語るのはKDDI 技術統括本部 副統括本部長 田村俊之です。「世の中には、無意識の偏見があるということは自身で理解していましたし、自分の中にもおそらくあるだろうと思っていました。しかし、研修を受けるという段階になって、“アンコンシャスバイアス”という単語を知り、DE&Iの中でそれが非常に重要だということを初めて知りました」

KDDI株式会社 技術統括本部 副統括本部長 田村俊之

研修で得られたアンコンシャスバイアスへの理解

研修の中で、アンコンシャスバイアスについて気付きを得た1つの事例について、「バスの運転手が、業務が遅くなるから家族に『夕ご飯を先に食べておいて』と連絡するシーンを提示されました。私はそれについて、父親が家族に対して連絡していると思いました。そこで、仕事で夜遅くなるのは男性という自分の思考自体こそが無意識の偏見、思い込みということを分かりやすい例として捉えることができました」と話します。

研修を通して、アンコンシャスバイアスという用語だけでなく、それが自身の中にも存在するという「気付き」を得たということです。まさに「私に先入観はない、という先入観を捨てよう」というKDDIのキャッチコピーに適した研修内容となっています。

さまざまな人が本来の能力を発揮するために、努力しても埋められない部分に不利益が生じないようにスタート地点を合わせるという考え方の「エクイティ:公平性」ですが、こちらについても気付きがあったといいます。

「例えばゴルフで、レディースティーは前側に設置されていますが、あれは平等にプレイするために女性として埋められない部分を最初から埋めている。それから格闘技などの体重別階級もエクイティに近い概念かもしれないと改めて感じました。KDDIでは、特に技術系の分野で女性基幹職が少ないという指摘があります。アンコンシャスバイアスやエクイティという考え方の浸透が、その問題を解決していくのではないでしょうか」

公平性には一人ひとりに合った対応をすることが重要

アンコンシャスバイアス研修で無意識の偏見への気付きと意識醸成へ

また研修を経て過去を思い返してみると、田村自身もアンコンシャスバイアスの対象になっていたといいます。

「私はもともと技術系として入社しました。開発業務を経て30代の半ば以降、サービスや事業の企画策定、M&Aといった必ずしも技術開発に関わらない、モノづくりではない業務も多く経験しました。そのとき、『理系の社員は、何かつくることにやりがいを感じるのでは?』といった考えを持っている文系の社員が多くいることに気付きました。理系はモノづくりを、文系はサービスを、考えるといった考え方も無意識のバイアスによるものです。理系の人財でも、お客さまに楽しんでいただきながら利益を得る、モノに限らずヒトに接することの方が楽しいと考える方は絶対いる。そういった個人の価値観を理解することが重要だと改めて気付きました」

DE&I アンコンシャスバイアス研修は現在、部長層やリーダー層向けに展開しています。研修が全社的に展開していくことに対して、田村は、「経営基幹職に女性社員を登用するとき、女性にだけその覚悟を問うような無意識のバイアスが働くことがあってはいけません。また、女性人財にさまざまな支援を行うことも“スタートを揃える”というエクイティの意味合いがあります。そのようなことをグループリーダーレベルまで理解してもらい、自然な形で仕事をしてもらえるような環境が整っていけば、最終的に組織のアウトプットも向上するのではないでしょうか」と期待をしています。

KDDIでは、以前からD&Iが推進され多様な人財に働いてもらう環境は整えてきました。今後もこれまで以上に、多様な人財に最大限の能力を発揮してもらうために、エクイティやインクルージョンがより重要であるという意識を社内で醸成していく方針です。そして、フェーズアップしたDE&Iの取り組みであるアンコンシャスバイアス研修などを通じて、多様な人財が活躍し、お客さまの多様なニーズに対して、多様な価値と新たな価値を提供できる「人財ファースト企業」へ変革していきます。

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