ビジネス環境やライフスタイルが常に変化していく時代において、変化に柔軟に対応しながらお客さまや社会に新しい価値を提案し続けていくためには、それをリードする人財が必要不可欠です。
KDDIでは中期経営戦略における最注力領域をDX(デジタルトランスフォーメーション)と定め、「KDDI VISION 2030」*1に掲げたありたい未来社会の実現に向けて社会全体の変革をリードできる人財の育成に力を入れています。
*1 KDDI VISION 2030は『「つなぐチカラ」を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。』を掲げ、2030年に向けたKDDIのパーパス(存在意義)を表現しています。
具体的には「人財ファースト企業への変革」を掲げ、「KDDI版ジョブ型人事制度」のもとで成果や挑戦、能力に見合った評価をすることで従業員のモチベーションを高めるとともに、DX領域をはじめとした「プロ人財」の育成に注力しています。

2020年に開始した「KDDI DX University」では、社内外の変革をリードする「DXコア人財」の育成に取り組んできました。
2022年度からは株式会社ディジタルグロースアカデミア、KDDIラーニング株式会社とともにKDDI全社員を対象とした「DX基礎スキル研修」を開始。
さらにKDDI版ジョブ型人事制度における30すべての領域ごとの更なる専門スキル研修プログラムも次々と整備を行っています。
また社内の人財育成で培ったノウハウを地域のDX人財育成に活用したり、DX推進をサポートすることで、社会全体のDX化を後押しする取り組みも行っています。
KDDIが考えるプロ人財育成とはどのようなものか、KDDIで活躍するDXコア人財とはどのような人物なのか、くわしくご紹介します。
「KDDI版ジョブ型人事制度」によるプロ人財の創出
KDDIは2020年から「人財ファースト企業への変革」を掲げて、働き方改革、社内DX、新人事制度という3つの変革に取り組んできました。
「いまや通信は、ビジネスや生活において意識しないところにまで溶けこみ、私たち通信会社が担う役割がこれまで以上に重要になっています。そうしたなかで安定した通信のご提供に加えて、社会に対して通信を活用した新しい価値を提案し続けていくことがKDDIの使命であり、それを担っていく人財をKDDI社内で育てていく必要があると考えています」と話すのは、コーポレート統括本部 人事本部 人財開発部長 木村理恵子です。
.jpg)
通信を軸として幅広い領域で新しい価値をご提案していくには、それぞれの領域に精通した「プロ人財」が欠かせません。社内の人財を育成するにしても、社外から採用するにしても、それぞれのポジションの職務内容を明確にして、それに見合った人財が、見合った処遇を得られる人事制度が必要になります。そこで、2020年8月から「KDDI版ジョブ型人事制度」を導入しました。年功的な要素を撤廃し、実力や成果に見合った評価を行うことで、モチベーション高く仕事に向き合えるようにする制度です。
「一般的なジョブ型人事制度と異なるユニークな点が大きく2つあります。1つは、KDDIグループの幅広い事業領域のなかで自分が目指すキャリアを自由に描き、多様な経験を積めること。もう1つは、テクニカルな能力だけではなく組織やチームの成功に貢献する『人間力』も重視していることです」
.jpg)
また旧来の管理職を廃止し新たに制定したグレード制度では、リーダー系統に加えてエキスパート系統をつくり、高い専門性を持つプロ人財が「経営基幹職」としてモチベーション高く仕事に臨める体系にしています。さらに、「社内人財公募制度」やKDDIグループ内で他の仕事を兼業できる社内副業制度も設け、自分のやりたいことに挑戦しやすい環境を整備しています。
.jpg)
「DX基礎スキル研修」は本部長クラスから順に全社員が受講
DX領域のプロ人財を育成していく仕組みとして、まずは2020年夏に「KDDI DX University」を開講しました。当初はデータをベースにビジネスデザインができる変革リーダー「DXコア人財」の育成を主眼として開始し、DXに必要な5つの専門領域「ビジネスディベロップメント」「コンサルタント&プロダクトマネージャー」「テクノロジスト」「データサイエンティスト」「エクスペリエンスアーキテクト」の専門スキル研修を提供してきました。現在までに、すでに約650人が受講しています。
さらに今年度からは、全社員を対象とした「DX基礎スキル研修」もスタートさせました。
(2).jpg)
テクノロジーが絶えず進化を続け、事業環境が激しく変化する中で持続的に成長し続けていくために、KDDI自身も「変革」を迫られています。その中で「常に自ら変化できる能力を持った企業」になるために、全社のどの部門でも、データやテクノロジーを活用して、組織やビジネスを変革していく力を付けていくことが重要です。
「DXや最新のデジタル技術に関する知識を全社員の共通言語にし、同じ方向を向いて変革を推進していくために、全社員向けのDX基礎スキル研修を始めました。KDDIでは、まず本部長・部長クラス、次にグループリーダークラス、そしてメンバークラスという順番で、職位の高いメンバーから順に行っています」

さらに現在は、KDDI版ジョブ型人事制度におけるDX領域以外の25の専門領域についてもそれぞれの領域のプロ人財の育成を目指して、専門スキル研修のカリキュラム整備を進めています。
「全社員がDXの基礎知識とそれぞれの領域の専門スキルを掛け合わせたプロフェッショナルになることによって、パートナーのみなさまと一緒に社会にイノベーションを起こし、新たな価値提供に貢献できる企業を目指してまいります」
「コミュニティ」がエンジニアのスキルを高める
KDDIのDXコア人財として活躍するDX推進本部 KDDIアジャイル開発センター エキスパートの大橋 衛はこれまで、KDDI社内のDX化の推進とエンジニア同士の社内外のコミュニティの立ち上げをリードしてきました。

DXを進めていく上で欠かせないのが、エンジニアの存在です。
そのエンジニアのスキルアップに必要なものこそ、「エンジニア同士のコミュニティ」であると大橋は話します。
「私がクラウド技術について学ぶときに、“コミュニティ”で感度の高い人たちとつながっていたことが大いに役に立ちました。だから、これと同じものをKDDIに持ち込んで、社内にコミュニティ文化を根付かせたかったのです」
大橋は、KDDI社内のクラウドを推進するキーマンとして2016年にKDDIに入社しました。そんな大橋が、KDDI社内で初めてとなる技術コミュニティである「Tech-in」、社外とつながる「Tech-on」を立ち上げたのは2018年のことです。
「KDDIにはさまざまな分野で優れたエンジニアがたくさんいます。しかし、私が入社したときはそれぞれの部門ごとにコミュニティが分断されてしまっている状態でした。これを自部門のなかに閉じずにつながることができたら、新しい知識の習得だけではなく、お互いの専門スキルの掛け合わせでものすごいアイディアが生まれるんじゃないかと思ったのです」
.jpg)
そんな大橋の思いから生まれたコミュニティはあっという間に社内エンジニアの間で根付き、いまではエンジニアに限らず、ビジネス系も含めて把握しきれないほどのコミュニティが立ち上がり、活動しています。
「このコミュニティ活動は、DX基礎スキル研修等でベーススキルを習得したての社員にとっても、専門スキルを持ったエンジニアからさまざまな刺激を受けられる場です。これが、もっと学びたい、技術活用していきたい、といった彼らの動機づけにつながっています。社内全体にコミュニティ文化が浸透した現状は、私にとって感動的であり、嬉しいことです」
.jpg)
大橋には、大きな目標があります。それは、「日本のエンジニアの価値を高めたい」ということです。それを実現するためにも、コミュニティでエンジニア同士がつながる、そして、外部に向けて発信することが重要だと言います。
地域のDX、人財育成を支援する
大橋はいま、KDDIアジャイル開発センター株式会社(以下、KAG)にも籍を置いています。同社は、アジャイル開発などの手法を使ってお客さま企業のDX開発の支援を行う会社です。KAGは2023年1月に三島市に新拠点を開設し、大橋は三島拠点のセンター長の役を担っています。
.jpg)
「三島市に限らず、地方には優秀なエンジニアやエンジニア企業がたくさんいます。KDDIは、その地域のエンジニアとともに連携しながら、より大きなスコープで地域の課題を解決していくことが重要だと考えています」
「首都圏に本拠地のあるIT企業が地域課題解決を行おうとすると、特定のソリューションや開発事業を直接提供しようとしがちです。ですが、それはサスティナブルじゃない。
我々が地域特有の課題を地域在住の企業やエンジニアと連携して解決に導いていくことで、少しずつかもしれませんが、地域の力だけでサービス全体やDX全体のデザインもできるようになるかもしれない。あるいは似たような課題を持つ地域同士をつなぐことができれば、ある地域の課題を別の地域のエンジニアが解決できるようになるかもしれない。そうやって、IT企業を頼らずとも自走で課題解決できる地域が増えていけば、日本のDXは今よりぐっと前に進んでいけるようになるはずです」
.jpg)
「コミュニティでエンジニア同士をつなげ、さらにはエンジニアとビジネスオーナー側とをつなげる。そうしたハブ役をさまざまな領域で行うことで、エンジニアの価値を高めたり、DXを前進させることにつなげたいと思っています」
全社員のDXスキルを磨くことが企業成長につながる
KDDIの“人財”育成制度「KDDI DX University」のなかで大きな役割を果たしているのが、デジタル教育・デジタル人材育成に特化した株式会社ディジタルグロースアカデミアです。同社は、IT技術と人材育成を核とした事業を手掛ける株式会社チェンジとKDDIとの合弁により2021年に設立されました。
「デジタルを武器に、人と企業が成長し、日本に変革をもたらす」というビジョンのもと、研修、e-ラーニング、コンサルティング、eラーニングプラットフォームの4つを軸として、大企業から中小企業、自治体までさまざまな組織のデジタル人材の育成を支援しています。
「デジタル人材の中心は、『企画する人材』と『創る人材(開発する人材)』です。しかし、これらの役割を担う人材だけではデジタルを活用し業務を円滑に進めることはできません。企画に対して適切な意思決定ができる『経営層』も、実際に『デジタルを使う人材』も必要です。業務を推進していくためには、それぞれの役割において必要なリテラシー、スキルを身に付けておくことが重要です。当社の考えるデジタル人材とは、何かの役割を担い、デジタルを活用し業務を推進していく方、つまりほぼすべての方が当てはまるのです」そう語るのは、同社のデジタル人材育成サービスユニット シニアマネジャーの夏目泰秀さんです。
.jpg)
「いまやすべての人が業務においてデジタルを使う時代です。一部社員のデジタルを活用する力を向上させるのではなく、全社員がデジタルで何ができるかを知り、使えるようになることが、DX時代の企業成長には欠かせません。全社員が『デジタルを知らない人材』から脱し、『デジタルを使える人材』を目指す取り組みこそデジタル人材育成には必要だと考えています」
こうした考えのもとディジタルグロースアカデミアでは、「全社員にデジタル基礎力を」を掲げて、定額制の学びのプラットフォーム「みんなデ」というサービスを提供しています。

「『みんなデ』はDXに関する講座・コンテンツを、好きなときに好きなだけ学ぶことのできるサービスです。初心者、初学者でも簡単に業務で活かせる知識も提供しています。また、1つの動画は10分程度に纏められており、効率的に学習できます。このサービスには、学び続けるための仕組みも多く含まれています」
KDDIの全社員を対象としたDX基礎スキル研修
2022年度から開始されたKDDI全社員向けのDX基礎スキル研修の研修・コンテンツ提供は、ディジタルグロースアカデミアが担当しています。KDDI DX Universityで提供していた教材・コンテンツを改修し、DX事例、マネジメントの意思決定、DX基礎、ビジネススキル、データリテラシーなどを実施し、2022年度には約6,000人のKDDI社員が受講しました。
「KDDIが社会全体のDX化をリードしていくには、真にお客さまの身近な存在になることが重要だと考えています。例えて言うとお客さまの正面に座るのではなく、横に並んで座り、自然と打ち合わせが開始されるような存在です。そのためには、プレゼンテーション力がある、会議をファシリテートできる、論理的に物事を考えられる、批判的思考でアイディアを出せるなどのビジネススキルは必須です。加えてお客さまごとの環境や背景を理解したうえで直面する課題を的確に把握し、KDDIのアセットを使った新たな価値の提案が求められます。こうしたスキルの習得をDX基礎スキル研修には組み込んでいます」
.jpg)
「現在は、KDDIでの人財育成で培ったノウハウを活用して地域のデジタル人材育成にも広げています。
社会全体のデジタル人材育成によって『デジタルを武器に、人と企業が成長し、日本に変革をもたらす』というビジョンを実現していきたいと思います」