2024.01.26

「仮想発電所」で再生可能エネルギーを主力電力へと育てる

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仮想発電所の技術を実ビジネスのレベルで運用

エナリスの事業の研究開発や事業戦略の立案を担っているのが「みらい研究所」です。会社の先頭に立ってビジネスの進む道を示し、サービスに関するシステム開発を自ら行う実行部隊でもあります。

株式会社エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長 兼 みらい研究所 所長の小林輝夫は、「3〜5年先の社会がどのように変化しているかを予測してビジネスモデルを検討し、プラットフォーム構築や具体的なサービス開発を手掛けています。プロトタイプを作って実証実験やパイロット事業を展開し、新規ビジネスを軌道に乗せていきます」と話し、こう続けます。

株式会社エナリス  執行役員 事業企画本部 本部長 兼 みらい研究所 所長 小林輝夫株式会社エナリス 執行役員 事業企画本部 本部長 兼 みらい研究所 所長 小林輝夫

「電力の業界はこの10年間で大きく変容しました。発電量が不安定な再生可能エネルギーを適切にコントロールする技術として仮想発電所(VPP:バーチャルパワープラント)が考え出されたことも、重要トピックの1つです」

再生可能エネルギーである太陽光や風力、地熱などは、自然環境によって発電量が増減することが大きな課題です。電力は、発電量と需要量のバランスをとることが重要で、バランスが崩れると停電が起きてしまうからです。

「東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーによって安全な電気を皆さんに届けて、安全な社会を作ろうという機運が盛り上がっているなか、発電量と需要量のバランスをとるという課題を解決できるのが仮想発電所の技術でした」

そこでエナリスは、経済産業省が2016年度から実施してきたVPP実証事業に継続的に参加しています。発電側と需要側の両方の技術実証に参加している唯一の企業であり、制御された電力を束ねて送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行うプラットフォームビジネスを展開しています。

仮想発電所のイメージ(資源エネルギー庁の資料を基に作成)仮想発電所のイメージ(資源エネルギー庁の資料を基に作成)

エナリスの強みは低圧リソースなどの分散型電源を千や万の単位で束ねて、まるで1つの大規模発電所として運用するVPP技術を実ビジネスのレベルで運用できる点です。
「家庭用蓄電池やEVといった低圧リソースは1つ1つの出力規模が小さいために、継続する出力時間が短いことや需要変動の影響を受けやすいなどの特徴があります。そのため、安定供給に向けては、リソースを束ねて群として管理/制御したりリソース同士をリレーのようにつなぐなどの工夫が必要となります。それは、簡単なことではありません。8年にわたる実証事業の中で失敗と成功を繰り返し、KDDIの通信技術などパートナーと連携しながら技術を構築することで成しえた結果であると考えています」

先進デジタル技術の活用でグリーントランスフォーメーションに挑む

こうした分散型電源をアグリゲーション(電力を束ねること)して制御・取引するためのプラットフォームが、エナリスが開発した「DERMS(Distributed Energy Resource Management System:分散型エネルギーリソース管理システム)」です。

DERMSを活用してアグリゲーションすることで生まれた“電気の価値”は、出力が天候に左右されやすい再生可能エネルギーを普及させるカギとなる調整力や調整力として活用します。このDERMSの中心にはAI予測技術、ブロックチェーン、IoT、DXといった先進デジタル技術が駆使されており、再生可能エネルギーが持つ“環境価値”としても活かすことが可能です。

「“環境価値”をブロックチェーンでトラッキングして顕在化することで、トークンやデジタル通貨に価値変換して取引できる環境を作ることができれば、1つの大きな経済圏になります。エナリスは先進デジタル技術を組み合わせたDERMSを武器にVPPを実現させながら、分散型電源の有効活用や再エネ主力電源化の推進を図り、脱炭素とビジネスが両立するGXな社会を実現させたいと考えています」