2023.12.08

いちはやく行動を。生物多様性保全に対するこだわりと思い

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他社に先駆けたTNFDレポート公開にこだわった理由

地球上の生物種の7割近くが、過去50年で失われてしまいました。

2022年12月に開催された生物多様性条約締約国会議(COP15)で、生物多様性の保全に関する世界目標が合意されたことを受けて、KDDIも生物多様性保全に対する取り組みを強化しています。

COP15と並行して、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)という、自然関連のリスクと機会が企業の財務に与える影響を開示するための枠組みの整備が進んでいます。
KDDIでもこの枠組みを利用し、2023年6月に国内の通信事業者として初めて、TNFDレポートを公開しました。

「いち早く行動することで、私たちの思いに共感し、生物多様性の保全という課題に共に取り組んでくれるパートナーを見つけることも、レポートを公開する目的のひとつでした」(KDDI サステナビリティ企画部 大藤桃子)

KDDI株式会社 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部サステナビリティ企画部 大藤桃子KDDI株式会社 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部サステナビリティ企画部 大藤桃子

TNFDレポートでは、私たちの主力事業である通信事業に焦点を当ててリスクと機会を分析しました。その結果、現時点で大きなリスクをもたらす行動は取っていないことが確認できました。一方、機会の分析は部門横断でのワークショップを通じて行いました。その結果、KDDIが持つテクノロジーが新たな事業機会を生み出す可能性があることが見えてきました。

通信エリア外での外来種調査

これまでKDDIは、社会貢献活動として小学生向けの環境教育や全国各地での森林保全活動など、生物多様性の保全に取り組んできました。しかし、社会全体を巻き込んで持続可能な活動を進めるためには、ボランティア活動だけでなく、ビジネスとして利益を生み出すことも必要だと、サステナビリティ企画部の柏木真由子は指摘しています。

KDDI株式会社 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 柏木真由子KDDI株式会社 コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 サステナビリティ企画部 柏木真由子

生物多様性の保全とビジネスを結びつけるひとつの取り組みとして、2023年9月に、株式会社バイオーム、沖縄セルラー電話株式会社と共に、西表島で外来種調査を行いました。

「以前から、通信技術が生物多様性の保全に大きく貢献できる可能性があると考えていたものの、具体的に何をすべきか、明らかではありませんでした。そんな中、生物情報の可視化に取り組むバイオーム社と出会いました。バイオーム社は、誰もが生物情報を収集できる『Biome』というスマートフォンアプリを提供しています」(柏木)

「バイオーム社とどのような取り組みができるか議論していた時、国立公園や山奥などの生態系が豊かなエリアでは携帯電話の電波が不安定であるため、アプリを使った調査が難しいという課題が明らかになりました。そこで、衛星通信とバイオーム社の調査ノウハウを組み合わせれば良いのではないかと考え、Starlinkを活用した生物調査を発案し、西表島の通信圏外エリアで外来種調査を実施するに至りました」(柏木)

西表島調査時に設置されたStarlinkアンテナ西表島調査時に設置されたStarlinkアンテナ

西表島での調査で得た知見を活用し、今後は企業や自治体への提案に力を注ぎたいと柏木は意気込んでいます。

「さまざまな自治体に話を伺うと、地域ごとに課題が大きく異なることがわかります。例えば、住民への環境教育の必要性や、希少種保護のための外来種調査など。それらの課題に対して、KDDIのアセットを活かした解決策を考えることで、単なる社会貢献だけではなく、ビジネスとしても成り立つ持続可能な活動の仕組みを作りたいと考えています」(柏木)

地道な改善と持続可能な活動の仕組みづくりを続けていく

「多くの企業や自治体が、変革の必要性を感じつつも、生物多様性という幅広いテーマに対してどこから手をつければ良いか迷っています。KDDIも、このテーマを単独で解決するのは難しく、様々なステークホルダーと共に取り組むことの重要性を認識しています」(大藤)

KDDIでは、TNFDレポートなどをきっかけに共感していただけるパートナーと協力しながら、生物多様性により一層配慮した事業に変革していく取り組みを進めています。

そのためには自社の情報開示が重要であると認識し、TNFDレポートのアップデートにも力を入れています。2023年8月からは、KDDIの通信事業にかかわる日本国内の基地局、データセンター、そのほかの拠点のうち、保護区など特に重要なエリア周辺に建設されている拠点について、周辺の環境を分析し、植物の外来種・希少種の分布を推定・評価することで、優先的に対応を検討すべき拠点を特定しました 。

「今回の分析結果を基に、生物多様性保全への貢献を実現するために策定した生物多様性行動指針に基づき、土地の特性に応じた対応をさらに検討する予定です。一つひとつの影響は小さいかもしれませんが、確実に取り組んでいきたいと考えています」(大藤)

「生物多様性から人々が受ける恩恵は、物質的なものだけでなく、自然とのふれあいによる心の充足や土地への愛着など、精神的・文化的なものも含まれます。私たちのつなぐチカラとパートナーの技術を組み合わせて、豊かな自然環境を保護し、自然を身近に感じる活動に貢献していきたいです」(柏木)

これからもKDDIは、豊かな地球環境を次世代につなぐため、持続可能な生物多様性保全に力を注いでいきます。