2023.7.26
カーボンフリーを実現する「サステナブル基地局」
KDDIのCO2総排出量のほぼ6割を占めている「基地局」。そもそも、なぜ、基地局のCO2排出量はこんなに多いのでしょうか。そこには全国各地で通信サービスをご提供するのに必要な基地局の消費電力が影響しています。
日本の電力の多くが化石燃料に由来していることから、電力消費が大きいとCO2の排出量が増えてしまうのです。
「KDDIは2022年3月で3Gを停波しており、1局あたりの消費電力が大きい3G基地局は既に引退しています。これはCO2の削減に大きく貢献しています」(大島)
4G、5G通信になり、実は1つの基地局あたりの消費電力は大幅に減っているのです。
今の基地局1局あたりの電力消費量はドライヤーとほぼ同じくらい。3G時代は基地局自体の消費電力が大きく、それを冷やすための空調機器も必要だったため多くの電力を必要としていました。4G以降の基地局は、技術の進化で無線機が小型化され、冷却の必要もなくなったことから1局あたりの消費電力は減っているのです。
しかしその一方で、昨今では通信が暮らしのあらゆる場面で使われるようになったことから、必要な基地局の数が増えています。今でも、基地局のCO2総排出量が全体の6割を占めているのにはこうした理由があるのです。
CO2削減の切り札、「サステナブル基地局」
基地局のCO2排出量をいかに減らしていくか。その解決策として登場したのが「サステナブル基地局」です。
サステナブル基地局は、太陽光パネルを設置して電力を供給し、足りない分はカーボンフリープランの電力を使用することで、CO2排出実質ゼロを実現します。
実際の設置にあたっては、太陽光パネルの効果を最大化できるようにさまざまな工夫があるといいます。
「現地に行って、あらゆる角度から検証しています」と話すのは、サステナブル基地局の設置と運用を担当しているKDDIエンジニアリング株式会社 藤原雅樹です。
発電量を最大にするためには、太陽光が最も当たる南向きの場所にパネルを設置する必要があります。地図で見てベストだと思った場所でも、季節による周辺環境や日当たりの変化など、現地に何度も足を運ばないとわからない環境を確認して、設置場所を検討します。
「太陽の動きに伴ってどのくらい影が伸びるのかを計算したり、影がさしても発電効率が落ちない機材を選んだり、さまざまな工夫をしています」(藤原)
「ただし、太陽光パネルの利用を想定して基地局を設置したわけではないので、いますぐ全ての基地局をサステナブル基地局に切り替えることはできません。基地局の周りに木が生い茂っていたり、陽当りの良い南側にアンテナ設置用の鉄塔があり、日陰になってしまったりというように、太陽光が届きづらい場所も少なくないのです。全国の基地局の中から、まずは条件の合う基地局を探して順次切り替えていきます」(大島)