KDDIトビラ

通信事業者がつながる災害対策「つなぐ×かえる」プロジェクト─東日本大震災から15年vol.5

東日本大震災から15年が過ぎました。未曾有の大災害を教訓に、KDDIは「つなぐ」という使命をより強く心に刻み、その進化の先にある「誰もが思いを実現できる社会」を目指しています。「KDDIトビラ」では、震災直後・初動の通信復旧から地域社会の復興、そして将来の災害への備えまでを連載でお届けしてきました。

最終回のテーマは「つなぐ×かえる」プロジェクト。東日本大震災を大きな契機に、KDDIは災害対応力を高めてきました。そしてその思いを同じくする通信事業者と手を取り合って誕生したのが「つなぐ×かえる」プロジェクトです。

もともとは2020年9月にNTTとKDDIが幅広い社会貢献を目的に共同で運営し、両社保有のケーブルシップ(海底ケーブルの敷設・保守を行う船)を災害時に相互活用する取り組みからスタートしました。能登半島地震での災害対策を機に、2024年12月にはソフトバンクと楽天モバイルが参画。大規模災害発生時におけるネットワークのさらなる早期復旧を目的とした通信事業者間の新たな協力体制を構築しています。

現在「つなぐ×かえる」プロジェクトに参画しているのは、NTTグループ(NTT、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ、NTTドコモビジネス)、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル。通信事業者8社が足並みを揃えることで、どのような災害対策につながるのか、まずはプロジェクトの概要をご紹介します。

進化する「つなぐ×かえる」プロジェクト

通信事業者8社の足並みが揃ったことで、「つなぐ×かえる」プロジェクトは、これまで以上に迅速できめ細やかな災害対応を可能にしました。

たとえば、各通信事業者が保有する事業所・宿泊場所・資材置き場・給油拠点などを共同利用し、お互いに被災地の通信復旧を支援する枠組みです。これによりKDDIの車載基地局が被災地への動線にあるNTTドコモの施設で給油することなどが可能になりました。また、KDDIではStarlink(スターリンク)を活用した衛星によるデータ通信サービスの提供も行います。

2025年1月に神奈川県平塚市で行われた通信事業者合同の車載型基地局への給油訓練の模様
2025年1月に神奈川県平塚市で行われた通信事業者合同の車載型基地局への給油訓練の模様

また、NTTグループとKDDIが所有するケーブルシップを、全社で運用する取り組みも行われています。災害時に可搬型基地局や燃料・発電機などを運搬し、被災地への海上からの直接支援を行います。通信途絶地域に船上から電波を発射して、通信を復旧させる「船上基地局」としても活用されています。2024年の能登半島地震では、実際にNTTグループのケーブルシップ「きずな」にKDDIが船上基地局を設置した事例もあります。

2025年3月4日から7日には、長崎県長崎市でNTTグループのケーブルシップを活用した合同実動訓練を実施。平時からの備えに余念はありません。

さらに、「つなぐ×かえる」プロジェクトでは、固定通信事業者とモバイル通信事業者が、回線と基地局の対応関係や復旧状況を事前に共有する体制を築き、基地局につながる回線の優先的な復旧を目指す取り組みも行われています。

そして、2025年10月22日に発表されたのが「つなぐ×かえる避難所支援共同プロジェクト」。通信事業者8社が協力し合い、災害時の避難所支援を迅速かつ効率的に行うための取り組みです。

災害時に多数の避難所が開設される際、通信事業者が個別に支援に向かうと重複や空白が生じる可能性があります。これを防ぐため、避難所を支援するエリアを分担し、支援を広く行き渡らせる体制を整えました。

「つなぐ×かえる避難所支援プロジェクト」における避難所支援のエリア分担イメージ
「つなぐ×かえる避難所支援共同プロジェクト」における避難所支援のエリア分担イメージ

通信事業者による避難所支援は「公衆無線LANの提供」「充電設備の設置」を基本としています。この取り組み以降は、プロジェクトに参画するいずれかの通信事業者が支援に入れば、利用者は通信契約に関係なく「つなぐ」ことができるようになります。

通信6社結集。新たな取り組みの背景を聞く

この体制がどのように生まれたのか、各社の「つなぐ×かえる」プロジェクト担当者にお話を聞きました。今回、集まっていただいたのは、NTTグループ(NTT、NTTドコモ、NTT西日本)、ソフトバンク、楽天モバイル、KDDIの6社のメンバー。

2024年の能登半島地震の際、現場に入った通信事業者のメンバーは、会社の枠を超えてさまざまな現場で相互支援を行いました。あらためてそれぞれの通信事業者が連携して、避難所を支援することの意義を聞きました。

NTTドコモ 災害対策室 青山 和茂さん
NTTドコモ 災害対策室 青山 和茂さん

「現場でいかに避難所のみなさんに快適に通信を使っていただくか、各社それぞれ単独の力で対応しきるのが容易ではない場合もあります。今回の避難所支援プロジェクトで、各社の新鮮な考え方を知ることができて、新しい支援のかたちが生まれるのではないかと考えています」(NTTドコモ 青山さん)

NTT西日本の岩見 哲也さんはプロジェクトを進めていくうえでの個人間の関係も重要だと言います。

NTT西日本 災害対策室 岩見 哲也さん
NTT西日本 災害対策室 岩見 哲也さん

「今回、通常はライバル会社であるみなさんと定期的に顔を合わせて一つの目標に向かって進めていくなかで、非常に連絡しやすい関係性が生まれていると思います。システム連携を前提としながらも、日常的に連絡し合える状況にあることが、災害時の密な情報共有にもプラスに働くのではないかと思っています」(NTT西日本 岩見さん)

ソフトバンク 営業戦略本部 事業企画部 神恵 聖さん
ソフトバンク 営業戦略本部 事業企画部 神恵 聖さん

「実際に災害が発生した際、他社さんがどのように動くのかを知り、さらには連携によって自治体情報が共有されることで、自社にとってもこれまで以上に効率よく迅速に支援実施を行うことができていると思います」(ソフトバンク 神恵さん)

楽天モバイル BCP管理本部 井上 修さん
楽天モバイル BCP管理本部 井上 修さん

「4社合同の総合訓練を行った際には、単独では難しいスピード感と対応力を形にできました。それは一つの目標を会社の壁を越えて実現すること、相互理解により達成できたものだと感じています」(楽天モバイル 井上さん)

KDDI 総務本部 総務部 野澤 和寛
KDDI 総務本部 総務部 野澤 和寛

「私は2012年より災害対策に携わってきましたが、避難所支援活動において“支援のムラ”が発生してしまうことが課題だと感じていました。今回の各社連携による支援エリア分担で、この課題は大きく改善されつつあります」(KDDI 野澤)

それぞれのスタンスの基本にある「被災地のために」

今回、メンバーのみなさんが口を揃えたのが「各通信事業者の取り組み方の違い」。災害対策に関する考え方や規模感、具体的な活動内容は同じ通信事業者という業態であっても異なります。今回それをとりまとめる事務局となったのが、NTTでした。

NTTはNTTグループを統括・調整する持ち株会社で「つなぐ×かえる」プロジェクトの中で、直接通信サービスを提供しない唯一の会社です。「一歩引いて全体を調整する役割として当社がちょうどよかったんだと思います」と、担当の東さん。

実際、“調整”に奔走しました。まず各社の災害対策担当者を訪問。2024年の能登半島地震の際の支援体制や内容をヒアリングし、一覧にして共有するところからスタートしたのです。

NTT 災害対策室 東 佑次さん
NTT 災害対策室 東 佑次さん

「能登半島地震の対応では、各社がそれぞれ工夫して取り組んでいることを改めて実感しました。当社とKDDIグループの船上基地局の共同運用や、給油拠点の共用など、良い取り組みがすでにありましたが、それをもっと横断的に組み合わせれば、被災地への支援はさらに迅速で効果的になるのではないかと感じたんです。そこで、各社の相互理解には、かなり時間をかけて取り組みました」(東さん)

それぞれのキャリアならではの手法を簡単に統一することはできませんでしたが、全社の根底にある思いはひとつ、「何がお客さまのためになるか」という点です。

「みんなは向かう方向は一緒なんです。プロセス的なところでは『こうあるべき』『いや、うちはこうなんだ』と意見が分かれても、そこで丁寧にお互いの事情をひも解くことで、より良い結果につながる局面もたくさんありました」(NTTドコモ 青山さん)

ときにはぶつかり合うこともありましたが、つねに立ち返って考えたのは「被災地のためになにができるか」。

「当社は各府県に支店があって、30拠点ありますので、100名近くのメンバーがこういった災害が起きた時にすぐ動ける体制を組んでいるところが強みですね」(NTT西日本 岩見さん)

「避難所には、あえて受話器のある固定電話型の無料電話を置くなど、ご高齢の方にも使いやすい機材を大事にしています。スピードはもちろんですが、“現場で本当に役立つ”ということを常に意識しています」(ソフトバンク 神恵さん)

「当社では“楽天トラベル”や“楽天市場”などのメンバーと協力し合って楽天グループとしてのアセットを活用した支援も可能かと考えています。みなさんとお客さまのために柔軟さを生かして取り組んでいきたいです」(楽天モバイル 井上さん)

「当社は各総支社が主体となって地域の災害対応を行う体制を取っています。災害が起きれば管轄する総支社が現地対策室として機能し、本社が全面的にバックアップする。この初動の速さと責任の明確さが強みだと考えています」(KDDI 野澤)

通信業界の一員としてつなぐチカラを進化させる

幸いなことに、新しい体制での「つなぐ×かえる」プロジェクトの本格的な実働はまだありません。ですが、メンバーたちは日常的にさまざまな災害に目を光らせ、発生時の社内外の動きに気を配っています。

被災地の支援はまだまだこれからです。KDDIの野澤は言います。

「どの会社が、と言うことではなく私たちは通信業界として一丸となって被災地の支援を図ります。『社会の安心をつなぐ』をもっと実現するために、引き続き本プロジェクトでみなさんとの検討提案を進めていきたいですね」(KDDI 野澤)

災害時の通信復旧には、事業者の垣根を越えた連携が欠かせません。「つなぐ×かえる避難所支援共同プロジェクト」は、設備や情報を共有し、避難所を含む被災地の通信をより迅速に回復するための取り組みです。

KDDIにとって「つなぐ」とは、通信を通じて人々の命と暮らしを支え、社会に欠かせないインフラを守り続けることです。その役割を果たすために、災害の教訓を次の備えへと生かし、事業者の垣根を越えた連携を進めてきました。これからもKDDIは、培ってきた知見と技術を進化させながら、どんなときでも通信を届けるための取り組みを続けていきます。

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