「つなぐ」使命を未来へ。教訓を“備え”に変えてきた歩み─東日本大震災から15年vol.3

東日本大震災から15年が過ぎました。あの未曾有の大災害を教訓に、KDDIは「つなぐ」という使命をより強く心に刻み、その進化の先にある「誰もが思いを実現できる社会」を目指してきました。「KDDIトビラ」では、東日本大震災を振り返り、震災直後・初動の通信復旧から地域社会の復興、そして将来の災害への備えまでを、連載でお届けします。

第3回のテーマは「災害への備え」。KDDIでは、今後起こり得る災害に備えて訓練と準備を行っています。これらの取り組みは、過去の災害から得た教訓を基に、進化し続けています。ここでは“もしものときにどう動くのか”、KDDIの災害への備えについて、最前線の現場に立つ社員の声とともに紹介します。

どんなことが起こっても24時間365日「つなぐ」ために

KDDIは、災害対策基本法に基づく指定公共機関として、いかなる状況においても24時間365日通信をつなぐ使命を担っています。災害時の通信は、救助要請や安否確認、行政や関係機関の連携、被災者への情報提供など、あらゆる行動の起点になります。その使命を果たすため、KDDIでは複数の訓練を継続的に実施しています。

たとえば、冬期と夏期の年2回行われる「災害対策本部 参集訓練」。この訓練は、公共交通機関の停止を想定したものです。
経営層、技術、広報などのさまざまな関係者が、徒歩や自転車、バイクでTAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)をはじめとする各拠点へ参集します。同時に、全国の支社や拠点とも連動し、「リエゾン要員」と呼ばれる連絡・調整役が、国や自治体の災害対策本部で得た被害状況や復旧要請などの情報を本社と共有します。このように、中央と地方が双方向で情報を密に連携し、迅速な意思決定につなげる体制を検証することが、この訓練の目的です。

「災害対策本部 参集訓練」の様子
「災害対策本部 参集訓練」の様子

そしてもう一つ、東日本大震災以降に本格的にはじまったのが、「災害対策訓練」です。

2年に1度行われる「災害対策訓練」とは

2025年1月24日、神奈川県横浜市のみなとみらい地区でKDDIの「災害対策訓練」が実施されました。実災害を想定し、2年に1度行われる大規模な公開訓練で、自衛隊や国土交通省、海上保安庁、消防などの関係機関とも連携し、通信復旧の初動から実動までを検証するのが特徴です。

2025年「災害対策訓練」の模様。KDDIの車載型基地局(左上)、災害時に乗り捨てられた車を移動する国土交通省の道路啓開訓練(右上)、KDDIと自衛隊によるStarlink設置の協働訓練(左下)、Starlinkの活用による携帯電話基地局の復旧訓練(右下)
2025年「災害対策訓練」の模様。KDDIの車載型基地局(左上)、災害時に乗り捨てられた車を移動する国土交通省の道路啓開訓練(右上)、KDDIと自衛隊によるStarlink設置の協働訓練(左下)、Starlinkの活用による携帯電話基地局の復旧訓練(右下)

2025年「災害対策訓練」の詳細はこちら

この「災害対策訓練」の企画・設計を担当したのが、KDDI エンジニアリング企画部の遠藤 晃です。遠藤は、防災担当として平時から国や自治体との調整を担い、災害時には災害対策本部に入り、KDDI本社と現地をつなぐリエゾン要員としての役割を果たしています。

KDDI コア技術統括本部 オペレーション本部 エンジニアリング企画部 遠藤 晃

昨年の訓練は、2つの軸をもとに構成されました。

「1つ目の軸は、能登半島地震で明らかになった課題への対応です。能登半島地震では、半島全体が孤立する状況が発生しました。そうしたなかで、通信復旧機材をどう投入したのか、どこに困難があったのかを振り返り、次にどうすれば改善できるのかを訓練で検証しました」(遠藤)

道路寸断による孤立集落の発生を想定し、車載型基地局やStarlink(スターリンク)機材をどのように被災地へ運び、設営するか。陸路が使えない場合の代替手段も含め、実際の災害を踏まえたシナリオが組み込まれました。

「2つ目の軸は、防災関係機関との連携強化です。通信事業者だけで完結する災害対応には限界があります。国土交通省、自衛隊、海上保安庁などと、実際に一緒に運び、一緒に組み立てる。その連携を明示的に確認することを意識しました」(遠藤)

KDDI コア技術統括本部 オペレーション本部 エンジニアリング企画部 遠藤 晃

実際の災害を想定したこの本格的な訓練は、東日本大震災を受けて2016年に始まり、2018年以降は2年に1度実施されています。

災害対策および復旧支援は日常の不断の努力から

KDDIの災害対策訓練が2年ごとに実施される背景を、遠藤はこう説明します。

「災害は繰り返し起こります。私たちは実災害での教訓を踏まえ、その都度、課題解決の方法を検討します。さらに関係機関と調整や個別の訓練を行い、機材にもシステムにも慣れるまで徹底的に使い込んでもらうには、2年というスパンが現実的なのです」(遠藤)

課題解決のために新たな機材や技術を構想・導入するだけでは災害の備えにはなりません。それらが現場で間違いなく活用される必要があります。この役割を担っているのが、KDDIエンジニアリングの通信対策室です。その一員である岡野 亮輔は、災害が起きていない平時の重要性を語ります。

KDDIエンジニアリング 運用保守事業本部 サービス運用本部 通信対策室 岡野 亮輔
KDDIエンジニアリング 運用保守事業本部 サービス運用本部 通信対策室 岡野 亮輔

岡野は平時から、機材の運用が確実に行われるよう訓練を設定し、災害に対する実働の振り返りを行っています。

「台風などで基地局に影響があった場合は、そこでどのような被害があったか、どう対応できたかといった振り返りを必ず行っています。訓練後も同様です。課題を見出し、次はどう改善できるのかを洗い出しています」(岡野)

現場の声は遠藤のチームにフィードバックされ、より現実に即した備えにつなげられています。新しい機材やシステムが導入されると、全国の拠点で問題なく使える状態になっているかを確認し、必要に応じて訓練や勉強会を実施。各拠点との日常的な情報共有と体制確認も欠かせません。

「誰がその機材を扱えるのか、災害時にどれだけの人員が動けるのか。そういった点まで含めて、常にシミュレーションしています。事前に把握しておくことで、初動のスピードは大きく変わります」(岡野)

KDDIエンジニアリング 運用保守事業本部 サービス運用本部 通信対策室 岡野 亮輔

災害対策は、日常業務のなかで積み上げられてきた不断の努力によって成り立っているのです。

激甚化する災害に備えて進化するKDDIの備え

東日本大震災以降、KDDIは災害対策を年々進化させてきました。たとえば、車載型基地局。台数は大幅に増え、車両も大型トラックベースから普通車、さらには軽車両レベルへと小型化が進みました。また、当時にはなかった可搬型基地局や長時間耐用のバッテリー、海や空から電波を発射する設備も実用化されています。

KDDIの設備・機材は2011年から大幅に進化。実際の災害にも運用されている。これらは災害時以外の「つなぐチカラ」としても強力なサポートとなる
KDDIの設備・機材は2011年から大幅に進化。実際の災害にも運用されている。これらは災害時以外の「つなぐチカラ」としても強力なサポートとなる
写真のハイエースのほか、エスティマなど普通車をベースとした車載型基地局の登場により、災害時の復旧スピードは格段にアップした。衛星通信ができるStarlinkアンテナも搭載済み
写真のハイエースのほか、エスティマなど普通車をベースとした車載型基地局の登場により、災害時の復旧スピードは格段にアップした。衛星通信ができるStarlinkアンテナも搭載済み

岡野は、車載型基地局の小型化について現場の視点から次のように語ります。

「災害時に対応しなければならない場所は、山間部や土砂崩れで道幅が狭いケースが多いです。車載型基地局の小型化で、普通車が通行できる道路状況であれば現地に入れるようになり、迅速に対応できる範囲が大きく広がりました」(岡野)

こうした動きと並行して、KDDIはポータブル発電機の開発にも注力しています。災害時の停波の原因は、停電と光回線の途絶が約8割。(2026年2月時点、KDDI調べ)停電により停波してしまった現地の基地局を復旧できる、機動性の高いポータブル発電機の導入も重視しています。

KDDIが運用しているジャパンジェネレーターズの「長時間連続運転発電機システム」。給油の必要なく最大72時間稼働でき、人力での運搬も可能
KDDIが運用しているジェーピージェネレーターズの「長時間連続運転発電機システム」。給油の必要なく最大72時間稼働でき、人力での運搬も可能

また、2023年より運用が開始された“空が見えればどこでもつながる”Starlinkは、車載型基地局に限らず、通信設備の小型化に寄与し、災害時復旧の機動力を飛躍的に向上させました。

静止衛星用パラボラアンテナ(左)、Starlinkアンテナ(右)。車載型基地局・可搬型基地局で使用する従来の静止衛星用パラボラアンテナとStarlinkアンテナを比較すると、約2/5の大きさ、約1/7の重さだ
静止衛星用パラボラアンテナ(左)、Starlinkアンテナ(右)。車載型基地局・可搬型基地局で使用する従来の静止衛星用パラボラアンテナとStarlinkアンテナを比較すると、約2/5の大きさ、約1/7の重さだ

「また、現地での設営も30分程度で完了します。従来の資機材では2時間程度必要だったので、大幅な時間短縮が実現し、『災害対応にStarlinkはなくてはならない』が現場の共通認識になっています」(岡野)

そのStarlinkも「現場で実際に使ってみないと見えてこない課題が必ずある」と岡野は言います。従来は、専用の三脚を使用していましたが、樹木や建物などで空の見通しが悪く通信できないケースが出てきました。現場からのそうした声を聞き、基地局設備など高所に設置するための専用金具を新たに開発することで、さらに利用範囲が広がったと説明します。

どんな条件でもつなげるよう、常に新たな備えを

「災害対策訓練」で試される災害へのさまざまな備えは、回を追うごとに刷新されています。新たに投入された機材のスムーズな災害時運用だけでなく、自衛隊や自治体、海上保安庁、国土交通省、さらには総合スーパー、コンビニなど連携先も多様化し、あらゆる面からの災害対応の可能性を追求しているのです。東日本大震災をきっかけに構想された船上基地局は、2018年の北海道胆振東部地震で初めて運用され、その後2019年の伊豆七島を直撃した台風による大島の孤立や2024年の能登半島地震に出動しました。KDDI保有の船、「KDDIオーシャンリンク」「KDDIケーブルインフィニティ」に加え、現在では弓削丸や鳥羽丸などの商船高等専門学校等の練習船も運用可能となり、今や7隻の船上基地局が今後起こり得る災害に備えています。

船上基地局「KDDIケーブルインフィニティ」
船上基地局「KDDIケーブルインフィニティ」
船上基地局「弓削丸」
船上基地局「弓削丸」
「弓削丸」には、衛星通信ができるStarlinkアンテナも設置済み
「弓削丸」には、衛星通信ができるStarlinkアンテナも設置済み

また、ドローンやヘリコプターを活用した空の基地局の研究も進み、災害の種類や被害状況に応じて、陸・海・空からの柔軟な対応が可能になっています。そして、ローソンとの連携で、災害時にはローソンの店舗を、物資供給や情報拠点とする「災害支援コンビニ」の構想のもと、通信と生活支援を一体で支える取り組みも始まりつつあります。

「災害支援ローソン」1号店である「ローソン富津湊店」
「災害支援ローソン」1号店である「ローソン富津湊店」

災害に対する備えに終わりはありません。遠藤と岡野は、今後の災害対策への思いを語ります。

「通信の安定確保を続けることはもちろん、防災関係機関と連携し、最終的に被災住民の困りごとの解決につなげていく。そのために、何ができるのかを常に考え続けていきたいです」(遠藤)

「機材やシステムの進化に頼るだけでなく、現地で起きていることを的確に拾い上げ、改善につなげることで、1秒でも早い復旧に貢献していきたいです」(岡野)

当時から、KDDIの「つなぐ」という使命は変わりません。社員が世代交代を重ねても、災害対応で培われたマインドや知見は受け継がれ、次の備えへと生かされています。その一方で、Starlinkやドローン、AIなどの新たな技術を取り入れ、車載型基地局をはじめとする設備も進化を続けています。過去の教訓を継承し、技術と体制を進化させながら、KDDIはこれからも「つなぐ」という使命を全うしていきます。

 

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