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KDDIが「大阪堺データセンター」を開設した理由とは?「AI×通信」で未来社会の価値創造に挑む

AIは、いまや欠かせない存在になりつつありますが、一方で扱われるデータ量と演算量は爆発的に増え続けています。こうした負荷に従来の「データセンター」が対応しきれなくなる前に、KDDIではAIの学習・推論を前提に設計された最新のAIデータセンターの開発を迅速に進めています。そして2026年1月22日、その第1号である「大阪堺データセンター」の開所式を行いました。

大阪府堺市に誕生したKDDI初のAIデータセンター「大阪堺データセンター」
大阪府堺市に誕生したKDDI初のAIデータセンター「大阪堺データセンター」

KDDI初のAIデータセンターは、いかにして生まれたのか。 3名のキーパーソンへの取材から、35年以上にわたるデータセンター事業の知見を武器にした挑戦、AI時代の新たなデータセンター像、そして彼らが見据える未来に迫ります。

通常3年かかるデータセンター開設を約半年で実現

KDDIがAIデータセンターに本格的に取り組む背景を、大阪堺データセンターの企画を担当したサービスプラットフォーム企画室の浅野 慶太は、次のように語ります。

KDDI 先端技術企画本部 サービスプラットフォーム企画室 浅野 慶太
KDDI 先端技術企画本部 サービスプラットフォーム企画室 浅野 慶太

「KDDIは長年、通信会社としてお客さまの“つなぐ”を支えてきました。近年では加速度的に成長するAIがその価値をさらに進化させ、通信×AIの力で日本が抱えるさまざまな課題の解決に貢献できると考えています。その一方で、AIを開発していくためには、大量のデジタルデータを安全かつ高速に処理できる環境が必要でした」(浅野)

そして、大阪堺データセンターは異例のスピードで開設しました。

「AIの需要は拡大し続けており、その性能、機器の更新スピード、規模は、従来型のデータセンターとは比べものになりません。従来のデータセンターの建設期間が約3年以上であるのに対し、私たちが直面していた課題は、いかにしてAI時代の速度に追いつくか、ということでした。そのため、大阪堺データセンターでは、シャープが液晶パネルの部品を生産していた旧工場を活用するという手法により、約半年でデータセンターを構築。2026年1月の本格稼働へと漕ぎ着けることができました」(浅野)

35年以上のデータセンター事業の知見を活用

大阪堺データセンターは、液晶工場を転用して建設が進められています。生産設備を動かすための大容量の電力と冷却装置を備えていたことが決め手となりました。GPUサーバーを大量に収容するAIデータセンターにとって電力と冷却設備は不可欠だからです。

液晶パネルの部品製造のためのラインが設置されていた広大なスペースをAIデータセンターに活用
液晶パネルの部品製造のためのラインが設置されていた広大なスペースをAIデータセンターに活用

KDDIは、1989年から「Telehouse(テレハウス)」ブランドでデータセンター事業を展開してきました。現在は世界各地に拠点を持ち、ロンドンのテレハウスは、世界有数の接続数と安定性を誇るデータセンターとして知られています。

「TELEHOUSE ロンドン ドックランド ノース2」。テレハウスブランドにおけるロンドン最新のデータセンター
「TELEHOUSE ロンドン ドックランド ノース2」。テレハウスブランドにおけるロンドン最新のデータセンター

今回、堺のこの場所を建設地に選び、設計と工事のプロジェクトマネジメントを担当したKDDI テレハウス技術部の義経 祥也は、「世界中のインターネット事業者やクラウドプロバイダーが集まるハブを設計・運用してきた経験が、今回のAIデータセンター開設にも生きている」と話します。

KDDI ソリューション技術運用本部 テレハウス技術部 義経 祥也
KDDI ソリューション技術運用本部 テレハウス技術部 義経 祥也

「データセンターの役割をひと言でいうと、サーバーを安全・安心に置ける“高級なアパートのような存在”です。私たちは電源と冷却設備、そしてインターネットへ接続するための多様なネットワークなどを準備し、企業のお客さまはそこにサーバーを置くことで、安全に運用することができるわけです」(義経)

大阪堺データセンターは従来のデータセンターと大きな違いがありました。

「とにかく大前提は、“一にも二にも納期”でした。通常は土地・建物から整備しますが、それではAI基盤の需要に間に合わない。そこで既存工場を購入し、大容量の電力と冷却設備を生かしながら短期間で構築しました。ただ、そもそも工場とデータセンターでは法規制が大きく異なるので、私たちは設計事務所と共に何度も行政に足を運んで、条件をクリアしました。

またAI向けGPUは発熱と消費電力が従来比で桁違いです。そのため、KDDIとして初めて水冷を本格導入し、空冷の従来型データセンターとは設計思想から異なる構造になりました」(義経)

施設屋上に備えられている冷却塔
施設屋上に備えられている冷却塔
大阪堺データセンターのターボ冷凍機。液晶工場時代から使用されていた設備をサーバー冷却のために転用している
大阪堺データセンターのターボ冷凍機。液晶工場時代から使用されていた設備をサーバー冷却のために転用している

AI×通信が切り開くの未来を支える最新のデータセンター

GPU(Graphics Processing Unit)は、もともとは映像処理やゲームの描画を高速に行うために生まれた画像処理プロセッサです。従来のデータセンターでサーバーの中枢はCPU(Central Processing Unit)と呼ばれる中央処理装置でしたが、これらに加えて、大阪堺データセンターでは、GPUサーバーを導入しています。

AIデータセンターのサーバー設置や、法人のお客さまに提供するAI基盤の設計を担当したAI計算基盤開発室の堀江 直樹はGPUの特徴をこう説明します。

KDDI ネットワーク開発本部 AI計算基盤開発室 堀江 直樹
KDDI ネットワーク開発本部 AI計算基盤開発室 堀江 直樹

「CPUが少数精鋭の職人だとすると、GPUは数千人の作業者が横一列に並んで、単純作業を一斉に処理していくイメージです。数千ものコアで並行して計算をこなすことのできるGPUは、大量の計算を繰り返しながら学習を行い、AIモデルをつくる工程と相性が良いのです。ただ、そのパワーの裏側では、大量の電力を消費し、桁違いの熱が発生します」(堀江)

そのため、従来のデータセンターとは異なる冷却システムが必要となります。

AIデータセンターのサーバールームに搬入されるGPUサーバー。NVIDIA社最新世代のGPUを搭載したHPE(ヒューレットパッカードエンタープライズ)社製「NVIDIA GB200 NVL72 by HPE」を導入
AIデータセンターのサーバールームに搬入されるGPUサーバー。NVIDIA社最新世代のGPUを搭載したHPE(ヒューレットパッカードエンタープライズ)社製「NVIDIA GB200 NVL72 by HPE」を導入

「今回、大阪堺にはNVIDIAの最新世代であるBlackwell GPUを搭載した、HPEのサーバー『NVIDIA GB200 NVL72 by HPE』を導入しました。サーバー1ラックあたりの最大消費電力は132kW、一般的なサーバーの10倍以上にあたります。この熱を適切に冷やすため、大阪堺データセンターではKDDI初の水冷方式を導入しました。GPUの上面に取り付けたプレートに冷却水を流して冷やし、基板など他の部分は従来通り空気で冷やすという、空冷と水冷のハイブリッド構成です」(堀江)

冷却した水をサーバーのフロアまで運ぶ水配管
冷却した水をサーバーのフロアまで運ぶ水配管
サーバールームの配管。水配管からの冷水は青いパイプ、サーバーを冷やした後の温水は赤いパイプを流れる
サーバールームの配管。水配管からの冷水は青いパイプ、サーバーを冷やした後の温水は赤いパイプを流れる

異例づくめのプロジェクトを各部署の連携で推進

大阪堺データセンターでは、GPUサーバーの採用に伴って、水冷設備を設置。これらを通常の約6倍のスピードで完遂するため、既存の工場を転用するという手段をとりました。異例づくめのプロジェクトをメンバーは振り返ります。

浅野
浅野

GPUが世界的に不足する中で、必要な数を確保しながら事業として成立させる難しさがありました。また、旧工場のデータセンターへの転用は当社としても前例のないプロジェクトであったことから、従来のKDDIのやり方にとらわれず、国内外のさまざまな手法や技術動向を調査・検討し、得られた知見を社内に展開することで、技術的な意思決定の迅速化に力を入れました。

義経
義経

工場からデータセンターへの用途変更には、法規制上のハードルが数多く存在しました。工場の2万平方メートルのフロアをデータセンターでは防火区画化する必要があり、1,500㎡以下に分割するため、天井高約11メートルの空間に巨大な防火壁を建設しました。クレーンで重機をつり上げての大変な作業でした。

堀江
堀江

最新機種のGPUサーバーは、仕様が未確定な部分も多く、必要な電力・冷却条件も刻々と変わりました。情報が揃わない段階で設計を進める必要があり、サーバーメーカとも何度も協議を重ね、試算や設計を何度もやり直しながら、機器と施設のバランスの最適化に最も力を入れました。

大阪堺データセンター から、さらに「つなぐチカラ」は進化する

AIが一般的になるにつれ、従来のデータセンターではなく、今後GPUサーバーを搭載したAIデータセンターの需要はさらに高まると予想されます。

「KDDIによる大阪堺データセンターのスピーディな開設は、今後の大きな糧になる」と設計担当の義経は言います。

「既存の施設を転用しつつ、短期間でAIデータセンターを立ち上げる経験は、今後の国内展開でも大きな実績になると思います。2010~2020年代へのクラウドへの移行という大きなシフトチェンジがありましたが、このときは海外勢が市場を独占しました。今度の国際競争において、国産として競争力を持ちたい。納期や技術力、コストを含めて、海外勢と正面から戦えるノウハウを、この大阪堺データセンターで蓄積できたと考えています」(義経)

KDDI ソリューション技術運用本部 テレハウス技術部 義経 祥也

サーバーに関しても、多くの挑戦があったと堀江は説明します。

「KDDIとして実績がなかった水冷のGPUサーバー設置の際、もともと付属していた配管部材では、今回の現場への設置に足りないことが分かり、自分たちで配管を設計・製造するというまさかの事態に。ですが、こうした予想外のチャレンジやさまざまな試行錯誤を通じて得られた多くの知見やノウハウは、これからKDDIがGPU基盤を構築していくうえで非常に大きな財産となりました。今後もこの経験を生かし、より高度なAI基盤の構築に挑戦していきます」 (堀江)

KDDI ネットワーク開発本部 AI計算基盤開発室 堀江 直樹

浅野は、大阪堺データセンターは今後のAI普及に向けたスタートであると補足します。

「このAIデータセンターは、ネットワーク運用やカスタマーサポートをはじめ、さまざまな業務の高度化・自動化を支える『AI活用プラットフォーム』としての役割も担っていきます。AIがネットワーク設定の手順書を自動生成して作業を進めたり、お客さま一人ひとりに合わせたサポートを提供したりと、AIがより身近に使われる場面を、このデータセンターを起点に増やしていきたいです。まさに、AIが当たり前になる社会に向けた、大きな一歩になると思っています」(浅野)

KDDI 先端技術企画本部 サービスプラットフォーム企画室 浅野 慶太

AIが社会のあらゆる場面に広がる中、その裏側で膨大な計算を支えるAIデータセンターは、これからのデジタル社会を形づくる基盤そのものです。大阪堺データセンターは、KDDIにとって最初の一歩でありながら、国産のAIインフラとして世界と戦っていくための重要な足がかりでもあります。

KDDIグループはこれからも、パートナーと共に「つなぐチカラ」の進化を加速させながら、通信・デジタルデータ・AIを掛け合わせて、新たな価値の創出に挑戦していきます。

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