毎年1月1日、新年の幕開けとともに放映されるauの三太郎お正月CM。
今年で12年目を迎え定番となったこのCMシリーズですが、2026年お正月三太郎CMはいつもとは少し雰囲気が異なります。これまでの元気で楽しいトーンから一転し、今年はエモーショナルなバラード調の楽曲とともに、「美しいものを見たとき、大切な人に共有したい」という思いを描きました。
「とどけ、ぜんぶ。」をテーマにして制作された今年のお正月三太郎CMの舞台裏を紹介します。
定番となったお正月CM。しかし今年はひと味違う
auのお正月CMはもうご覧になりましたか?
通信サービスブランド「au」を提供するKDDIではこれまで11年間、元気になってもらえる応援歌のようなCMとしてお正月CMを放映しています。例年の三太郎たちのお正月は歌ったり踊ったり、おもしろいハプニングが起きてみんなで笑ったりして、まるでお祭りの最中のようなにぎやかさがありました。

今年でシリーズ12年目に入る2026年のお正月は、これまでのシリーズとは雰囲気を一転させ、三太郎たちの日常をしっとりと描いています。
桃ちゃんこと桃太郎(松田翔太さん)が道端できれいな花を見つけ、かぐちゃんことかぐや姫(有村架純さん)にも見せてあげたい、と思うところからストーリーが始まります。
浦ちゃんこと浦島太郎(桐谷健太さん)、金ちゃんこと金太郎(濱田岳さん)もそれぞれ、誰かに見せたいものを見つけて大切にしながら歩き出します。桃ちゃんがかぐちゃんに花を差し出すと、かぐちゃんは驚き、そして涙を浮かべてしまいます。そのワケとは……?
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さらに、元気の出る歌が多く使われてきた三太郎のお正月CMですが、今回は菅田将暉さんが演じる鬼ちゃんがCMオリジナルソングを歌っています。これも今までの三太郎シリーズにはなかった新しいチャレンジであり、今回のCMの注目ポイントです。
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三太郎シリーズを長年手掛けてきたクリエイティブディレクターの篠原 誠氏は「展開としてはシンプルな内容のCMです。きれいなものを見つけた時に、大切な誰かに見せてあげたいと思うこと、そして、そんな人がいること自体の幸せを描きたいと考えていて、そんな想いぜんぶが届くといいなという気持ちを込めて、2026年のテーマとして『とどけ、ぜんぶ。』をご提案しました」と語ります。
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「とどけ」を初めてメッセージに起用
三太郎シリーズで「とどけ」という言葉が使われたのは初めてのこと。
篠原氏が考えたメッセージ案の中には、近年のKDDIが掲げている「つなぐ」や「つなげる」といった言葉を使った案も含まれていました。しかし選ばれたのは前例のない「とどけ」だったのです。
KDDI コミュニケーションデザイン部長の山中 雅貴は、このメッセージは自然に選ばれたと振り返ります。
「KDDIの事業の根幹は通信です。au Starlink Directや『つながる体感No.1』など、お客さまにKDDIとしての「通信の価値」を届けてきたトピックもたくさんあります。しかし『つなぐ・つながる』は手段であり、誰かと誰かがつながって『思いがとどく』ことこそが、お客さま視点での本当の価値だと考えました」(山中)
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篠原氏は、このメッセージが選ばれたこともKDDIの社風が表れていると感じています。
「KDDIが何かを語るとき、いつも主語はお客さまや他者です。企業として自社がどうするかよりも『一緒に何する?』と語りかけるようなフレンドリーさを感じます。あたかも喫茶店に入ったら、テーブルの対面ではなくソファに横並びで座るような親近感です」(篠原氏)
篠原氏も三太郎シリーズを手掛ける際には、笑えるツッコミどころはありながらも、誰かを傷つけたり、いじわるしたりする内容にはしません。
「auブランド同様に、三太郎も仲良しで好かれるキャラクターであってほしいと願っています」(篠原氏)
篠原氏のそうした意図が確かにとどいた一人が、KDDIの松岡 杏珠です。松岡は学生の頃に三太郎CMを見てKDDIを志望し、今ではauブランドのイメージを発信する側となって奮闘しています。
「今年のメッセージ『とどけ、ぜんぶ。』には、KDDIのまっすぐな気持ちが集約されていると感じました。お正月CMの雰囲気をガラリと変えたことは私たちにとって大きな挑戦です。しかし、いま、KDDIは目指す姿として『夢中に挑戦できる会社』を掲げていますし、お客さまやパートナーさまに今年のCMで描かれたメッセージが届くように、私も夢中になって挑戦しました」(松岡)
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信頼関係の中で生まれていくクリエイティブ
何も起きない日のちょっとした出来事にフォーカスした今回のCMだからこそ、いつもの元気いっぱいな姿ではない、繊細な表情づくりや仕草が役者の方々には求められました。
「実は、いつもと異なるトーンをうまく表現できるだろうか、と撮影前は少し不安でした。しかし、いざ本番がはじまると、役者さんたちは1テイクから完璧に演じてくれました。走るシーンでは役者さん側からリテイクの要望があったほどです」(篠原氏)
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「CMオリジナルソングを録音する際、映像での出演ではなく、歌での出演であることを鬼ちゃん(菅田将暉さん)がとても不思議な感覚とおっしゃっていました。まるで語りかけるような歌い方はCMの雰囲気にとてもマッチしており、CMに命が吹き込まれたような感覚をおぼえました。鬼ちゃんの声が入ることによって、このCMは完璧になりましたね。そして驚いたのは、何テイクも録音はしたのですが、結局、曲のほとんどの部分が1テイク目を使用していることです」(篠原氏)
撮影現場に立ち会った山中や松岡も、役者の方々の名演に驚いたと言います。
「今年で12年目になるシリーズですから、役者さんたちにも役柄への思い入れがあります。一瞬の場面でも、その役が持つ『らしさ』や世界観を追い求めていることを強く感じた撮影でした。役者さんに愛されているCMシリーズなのだと改めて感じました」(山中)
「きれいな花を届けたいという思いが溢れている演技で、完成版の試写を見たときは思わず拍手が沸き起こりました。今回は30秒、60秒、90秒版を制作しており、特に90秒版は映画を見たあとのような充実感と暖かさを感じます」(松岡)
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実は90秒版のCM制作もKDDIにとっては新しい挑戦でした。放送枠の確保が難しく制作負荷が高まる90秒CMは敬遠されがちですが、これは今回、KDDI側から提案したものです。
「11年目だからこそクリエイティブだけでなく、お客さまにもっとauへ共感していただきたい、他のCMと違う体験が好奇心につながりお客さまの記憶に残ると考え、90秒CMの制作に踏み切りました」(山中)
「60秒版と90秒版では、単純な長さは1.5倍ですが、内容の密度はより濃くなります。我々としても90秒版を作ったほうが良いと考えていましたので、KDDI側から提案があり驚きました。それほど信頼してもらっているのだと感じたのです」(篠原氏)
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CMでは商品・サービス名を視聴者に印象付けるための工夫が随所に織り込まれるのが一般的です。しかし篠原氏とKDDIとの打ち合わせでは、「三太郎の世界観でその表現はおかしい」「メッセージを1つに絞ろう」など、クリエイター側が指摘するようなことがクライアントであるKDDI側からも次々に出てくると篠原氏は言います。
「KDDIの皆さんも三太郎シリーズを愛していることが、その真剣さから伝わってきます。だからこそ、このCMをご覧いただいた方が、これを家族や友人や恋人、あるいは会社の同僚など、ほかの誰かに見せたいと思って相手の顔が浮かんだら嬉しいですね。それこそが、このCMのメッセージが視聴者に『とどいた』という証拠です」(篠原氏)
年始の休みにこのCMをご覧になった方の手でこのCMが広く共有されていったら、『とどけ、ぜんぶ。』の思いを実現できたのだな、と山中と松岡も声をそろえます。KDDIのつなぐチカラによって、何かを誰かへとどけたいという共感が広がっていくと嬉しいです。
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