“働く人”と“訪れる人”に向け体験価値のアップデート。KDDIが実践する新しい働き方と空間づくり―KDDI SUMMIT 2025

2025年10月28日から29日にかけて、TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)の会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された、KDDIグループ最大級のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2025」。

今年7月、KDDIは本社をTAKANAWA GATEWAY CITYへ移転しました。交流とイノベーションの歴史を持つこの高輪の地を “未来への実験場”と捉え、働く人・訪れる人の体験価値をアップデートしていこうと挑戦しています。
セッション「高輪から拡げる、“働く人”と“訪れる人”に向けた体験価値のアップデート」ではKDDIの取締役執行役員専務・最勝寺 奈苗、執行役員常務・那谷 雅敏らが登壇し、高輪の新本社から挑戦する新しい働き方、そして、移転で培った知見と実績をもとにお客さまのオフィスづくりを支援する取り組みについてご紹介しました。

KDDI 取締役執行役員専務 CFO コーポレート統括本部長 最勝寺 奈苗
KDDI 取締役執行役員専務 CFO コーポレート統括本部長 最勝寺 奈苗

高輪からはじまる、新たな働き方の挑戦

第一部「本社移転を契機に挑戦する新しい働き方」では、取締役執行役員専務 CFO コーポレート統括本部長の最勝寺 奈苗が登壇し、本社移転の背景に触れました。

「KDDIは2025年7月に本社をTAKANAWA GATEWAY CITYへ移転しました。ここ高輪の地は、江戸時代は海であり、江戸と日本各地を結ぶ交流の海の玄関口でした。そして明治時代には日本初の鉄道が海の上を走った、イノベーションのはじまりの地でもあります」(最勝寺)

この「交流とイノベーションの歴史」を引き継ぎ、多様なアイデアを集積し、日本からイノベーションを創出していくことをKDDIとして目指しています。「そのような“未来に向けた実験場”として新本社を位置づけ、まさに“未来をつくる仲間とつながる場所”にしたいと思っています」と語りました。

新本社のコンセプト「Connectable City」には、新本社をKDDIグループが一堂に集まる“大きな街”と位置づけ、社内外の多くの人々が日々集い、協力し合い、新しいアイデアを生み出す場にしたいという想いが込められています。最勝寺は「社員同士はもちろん、パートナーさまやお客さまとのつながりを強化することで、イノベーションが生まれ、未来への扉を開いていく、そんな本社を目指しています」と述べました。

新本社コンセプト

本社移転の目的は大きく2つあり、1つ目として「コラボレーションの促進」を挙げました。「社会情勢は、AIの台頭や少子高齢化による労働力不足など、大きな変化が見られます。変化に柔軟に対応しながら新たな価値を創出し続けるためには、パートナーさまやグループ会社とのコラボレーションを強化することが必須です」(最勝寺)

第二の目的としてBCP機能の強化を挙げ、「通信事業者として『24時間365日、お客さまの命・暮らし・心をつなぐ』という使命を果たし続けるため、災害に対処できる統括拠点としてBCP機能を高めました」と説明します。電源の冗長化、衛星回線やStarlinkの導入、危機管理対策室などの取り組みを紹介しつつ「万全なBCP体制を整えることで、お客さまにいつでも安心して使っていただける質の高いサービスをお届けし続けます」と力強く語りました。

本社移転を機にKDDIが目指すのは、コラボレーションを通じて新たな価値を生み出す働き方への変革です。まず、KDDI版ジョブ型人事制度の背景に触れました。

「当社は2020年にKDDI版ジョブ型人事制度を導入しました。この制度の特徴は、単に専門性を磨くだけでなく、人間力を重視している点にあります。人間力は多様な人との交流を通じて高められるものです」(最勝寺)

そこで、新本社では、グループ各社やパートナー企業の社員が同じ場所に集い、リアルな接点の中で様々な交流が生まれ、新たな価値を生み出せる環境を整備しました。最勝寺は「この新しいオフィスに社員が集い、KDDI版ジョブ型を一層加速させていきます」と語りました。

KDDIの人財戦略

またKDDIでは「心豊かに、仕事に打ち込む」というコンセプトの下、働き方アップデートに取り組んでいます。その柱となるのが「ハイパフォーマンス」と「コラボレーション」の実現です。

「ハイパフォーマンスでは、一人ひとりが時間の使い方を主体的に考え、メリハリをつけて働くことで生産性を高めます。コラボレーションでは、部署や会社の垣根を越えて『集い、つながり、成長する』ことを目指しています」と説明します。

こうした新しい働き方を実現するために、本社移転は大きな契機となりました。社員が集い、コラボレーションを通じて新たな価値を生み出す──KDDIはその姿勢をさらに加速させていきます。

本社移転を機に目指す働き方

「新しい働き方の実験場」としての新本社が生み出す価値

新本社は「新しい働き方の実験場」として設計され、社員の挑戦を後押しする多くの仕掛けを用意しています。

1つ目の特徴は、業務内容に応じてオフィス内の最適な働く場所を自ら選択する働き方「社内ABW(Activity Based Working)」の推進です。社員はその日の業務内容に応じて、最も生産性が上がる環境を自ら選べるようになりました。
また、社内ABWの実施促進のため、社員の所在や混雑状況を可視化する仕組みも導入しています。これにより、リアルタイムでつながり、対面でのコミュニケーションが一段と活発になっています。

社内ABW(Activity Based Working)

2つ目の特徴は、社員を支えるサポートサービスです。「新本社ではロボットを積極的に導入しています。社内便の配達やショールームの案内などを担ってもらうことで、社員の庶務的な負担を軽減しています」と紹介しました。

また、オフィス環境に特化した「LAWSON」として無人決済の実証店舗を設置。スマートフォン一つで購入が完了し、レジ待ちのないスムーズな買い物を実現しています。さらに、ロボットによる回遊販売も実施しており、自席付近に来たロボットから気軽に商品を購入できるようにしています。「これらの仕組みにより、社員は時間を効率的に使い、創造的な業務に専念できるようになっています」と説明しました。

サポートサービス

3つ目は、社員の健康維持を支えるリフレッシュ環境です。KDDIでは社員が健康であることが結果的に生産性や創造性の向上につながると考えており、「社員の健康維持も当社の重要な経営課題の一つと捉えています」と強調します。新たに設置された食堂では、高タンパク・低脂質のメニューや栄養士監修の健康メニューを提供。さらに、ヨガなどの運動セミナーを開催し、ウォーキングマシンなどの運動器具も導入しています。

4つ目の特徴は、パートナーとの共創を加速させる拠点「TSUNAGU BASE(ツナグ ベース)」です。ここでは、KDDIの事業戦略を体験できる「Showroom(ショールーム)」、StarlinkやAIなどを活用した社会課題解決の取り組みを紹介する「Tomorrow Lab(トゥモロー ラボ)」などを設けています。「多くの人が集い、アイデアや知見を掛け合わせることで、イノベーションを生み出す場を目指しています」と力説しました。

TSUNAGU BASE(ツナグ ベース)

最後の特徴が、オープンコラボレーションの促進です。社員同士の偶発的な出会いを生み出すための仕掛けとして、オープンミーティングエリアやコワーキングエリアを多く設けています。その一つが社内コワーキングの場「Knowledge Camp(ナレッジキャンプ)」です。キャンプ場のような空間でリラックスしながら働ける設計で、部署の垣根を越えて活発なコミュニケーションが生まれています。
また、ビジネスイベントやワークショップ、ファミリーデーなど、社内外をつなぐイベントも定期的に開催しています。「こうした取り組みを通じて、社内外のオープンで偶発的なコラボレーションを後押ししています」と語りました。

オープンコラボ

こうした新本社での取り組みは、すでに成果として表れています。出社率は移転後に81%まで上昇し、約70%の社員が生産性の向上を実感しています。「出社したい」と感じる環境が整い、社員の行動や意識にも確かな変化が生まれている中、新オフィスを起点とした働き方改革の成果は着実に広がり、社員一人ひとりのパフォーマンスと協働を支える力となっています。

社員の変化

最後に最勝寺は、今後も、社員の声やデータを収集・分析しながら、オフィス環境や制度を絶えずアップデートし続ける方針であると強調し、「高輪から始まったこの挑戦を、今後は、他拠点やグループ全体にも展開し、働き方アップデートと価値共創を進めてまいります。本社移転を契機とした、当社の新たな挑戦に、ぜひご期待ください。」と締めくくりました。

人とテクノロジーが共に進化する「空間の未来」へ~「KDDI Smart Space Design」で実現する新たな空間づくり~

第二部では「人起点で変わり続ける、空間の今と未来」と題して、執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長の那谷 雅敏が講演を行いました。

KDDI 執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長 那谷 雅敏
KDDI 執行役員常務 ビジネス事業本部 副事業本部長 那谷 雅敏

まず日本が直面する社会課題に触れ、「2040年には労働人口が約1,200万人減少し、今よりも2割少なくなると予測されています。長時間労働、ワークライフバランス、人材確保などの問題が喫緊の課題となっています」と指摘。これらの課題を解決するためには、テクノロジーを活用した新しいアプローチが不可欠であり、「AIやロボットの活用、そして働き方の改革が今まさに現実のものとなりつつあります。テクノロジーの力で労働力減少の影響をどう抑えるかが、社会全体のテーマです」と強調しました。

次に、「柔軟性」と「進化」を新たなアプローチのキーワードとして掲げました。1990年代はタイムカードやスケジュールボードなどで社員の出退勤を管理していたのに対し、2020年代はシステムに変わり、紙やペンが不要になりました。「2025年のオフィスでは、居場所の見える化によって、フリーアドレスでも会いたい人をすぐに見つけられます」と那谷は述べました。そして今後は、「ロボットが社内便を届け、回遊販売が自分の好みの物品を載せてやってくるような未来が来る。高輪オフィスは、こうした未来の働き方を実験する場所なのです」と那谷は説明します。

キーワードは“柔軟性”と“進化”

こうした状況を踏まえ、KDDIは2025年8月19日に「KDDI Smart Space Design」を始動しました。通信・ロボット・AIを起点に、働く空間と訪れる空間の両面でお客さまに価値を提供する取り組みです。「オフィスには通信が欠かせません。ロボットやWi-Fi、入退館や顔認証、あらゆる仕組みが通信によって支えられています。だからこそ、空間のコンセプトづくりから運用まで一気通貫で支援できるのがKDDIの強みです」と述べました。

KDDI Smart Space Design

ワンストップで支援するメリットの一つは、「安定した通信環境の実現」です。テクノロジーを後付けする従来の空間づくりでは、コンセプト策定後に配線を検討するため、機器を取り付けたくても配線のためのルートがなく、設置に難儀することが少なくありません。しかし、「KDDI Smart Space Design」では、コンセプト段階から通信を設計に組み込むため、適切な場所にネットワークを構築できます。

さらに「人とテクノロジーの共存」も実現可能です。従来の空間づくりではロボットが通る動線を考慮しておらずそもそも導入ができないケースがありました。「KDDI Smart Space Design」では、ロボットの動線を踏まえた空間づくり、ロボットと設備をシステム連携させ、ロボットと人が共存する空間を実現します。

続いてモデルケースをご紹介。
社内ネットワークを構築し、熱感知センサーを通じてデータを収集することで、フロア内の混雑を可視化できます。フリーアドレスの働き方では、社員の位置を把握しにくい場合もありますが、PCのMACアドレスをWi-Fi経由で取得し、個人を特定できる技術を活用することで、社員の位置を可視化する仕組みも実際に高輪本社で導入されています。
「目的に応じて通信の種類を変えながら、働く人、訪れる人それぞれに必要な情報をご提供していきます」と那谷は述べました。

働く空間

また、訪れる人に向けても支援を行います。例えば、街にスタジアムを作る場合、5G回線を導入し、手元のスマートフォンでズームをして選手の様子を見たり、基地局を設置して多視点から会場の様子を確認できるようになったり、没入感のある体験をお届けします。複合施設では、人流を可視化し、混雑をどう解消していくのか防止策の策定に取り組んでいます。
「特にオフィスでは、出勤される方がどの方向から来るのかを把握し、最適な入り口の配置を決めることができる。こういったことがデータとともに行える時代がやってきました」と語ります。

訪れる空間

KDDIの高輪本社では、執務室やコワーキングスペース、BCP対策室、そして食堂やカフェなどでテクノロジーを活用しており、あらゆる空間が通信でつながっている姿を形にしています。KDDI社外の方々も見学可能で、すでに多くのお問い合わせをいただいています。

高輪本社をショールーム化

8月19日の発表以降、ショールーム見学だけでなく、「KDDI Smart Space Design」を共に推進していくパートナーとしての問い合わせも多く寄せられています。那谷は「58社のパートナーさまとともに、みなさんが幸せになれる新しいオフィスや街づくりに取り組んでいきたい」と力説しました。

また、KDDIの空間づくりのご支援の変遷についても振り返り、1980年代から海外でサーバー構築などのファシリティに取り組んできた実績や知見を日本で昇華させ、テクノロジーを組み込んだ空間づくりを「KDDI Smart Space Design」として日本からグローバルに展開していくとし、「日本の設計と構築は世界に通じる力があります」と語りました。

ご支援の変遷

働く空間・訪れる空間のアップデートに向けた展望

今後の取り組みとして、国内初となる「オフィスレイアウト生成AI」を開発中であることも発表。従来は別会社に依頼していたレイアウト・見積もりなど通常1ヶ月かかる工程を約15分で完了できるようになります。
「オフィスづくりのあらゆるフェーズをワンストップでサポートし、理想のオフィスを実現するため全力で支援します」と展望を示し、来年2026年6月に正式リリース予定であると明かしました。

今後の展開
KDDI Smart Space Designの拡がり

最後に那谷は、オフィスや倉庫などの「働く空間」と店舗、スタジアム、コンビニなどの「訪れる空間」という二つの領域をテクノロジーでアップデートしながら、「この新しいデザイン領域で、お客さまやパートナーさまとともに挑戦を続けていきたい」と力強く語り、セッションを締めくくりました。

KDDI SUMMIT 2025のマイページでは、本講演のアーカイブ動画をフルでご視聴いただけます。是非ご覧ください。

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