蓄電所と再エネ事業で持続可能な社会を目指す。KDDIのカーボンニュートラルへの挑戦

KDDIグループは2025年8月、栃木県の「小山ネットワークセンター」内に、初の蓄電所を竣工しました。蓄電所とは大型蓄電池を備えた施設で、太陽光などで昼間に発電した余剰電力を貯め夜間に放電することにより、無駄なく電力を使うことができる仕組みです。

蓄電池は再生可能エネルギーの普及拡大には欠かせない設備です。例えば太陽光の場合、晴天なら発電しますが、雨天ならほぼ発電できません。晴天続きで発電量が多いときに蓄電池に貯めた電気を、電力が足りないときに使うことで、再生可能エネルギーの安定供給に貢献することができるのです。

この蓄電事業を主として行うのはauリニューアブルエナジー。太陽光を中心とした再生可能エネルギー発電事業を行っているKDDIのグループ会社です。

KDDIグループ初の「小山蓄電所」。KDDIグループが策定する中長期の環境保全計画「KDDI GREEN PLAN」の一環として目指す社会全体の脱炭素にとっても重要な施設。
KDDIグループ初の「小山蓄電所」。KDDIグループが策定する中長期の環境保全計画「KDDI GREEN PLAN」の一環として目指す社会全体の脱炭素にとっても重要な施設。

通信会社であるKDDIが電力事業に力を入れている背景や、脱炭素社会を目指す取り組みについてご紹介します。

カーボンニュートラルは通信会社としての「社会への責務」

KDDIがカーボンニュートラルを目指すなかで、再生可能エネルギーの普及に取り組むことは責務であると、KDDIサステナビリティ経営推進本部の矢野 絹子は言います。

KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部長 矢野 絹子
KDDI コーポレート統括本部 サステナビリティ経営推進本部 本部長 矢野 絹子

「KDDIは、電力などのエネルギー消費を通じて年間約100万トンのCO2を排出しています。これは一般家庭の約40万世帯分、たとえると、おおよそ京都市の全世帯分に相当します。そのうちの98%が携帯電話基地局・通信局舎・データセンターで使用する電気に起因しています。

KDDIでは2025年度中に大阪府堺市に、2027年度内には東京都多摩市に、それぞれAIに対応した大規模なデータセンターを建設する予定なのですが、たとえば堺市のAIデータセンターでは、大量のデータ処理やディープラーニングを行うためGPU(Graphics Processing Unit)の発熱量は従来の10倍以上上昇します」

そのための打ち手のひとつがエネルギーの効率化。「エネルギー使用を抑制する省エネ技術の検証をすでに行っている」と矢野は言います。

2027年度中に完成予定のデータセンターTelehouse TOKYO Tama 5-2nd」
2027年度中に完成予定のデータセンターTelehouse TOKYO Tama 5-2nd」

堺AIデータセンターの環境を模擬的に構築し、発熱するサーバー内に直接冷水を送り込んで、従来の空冷方式よりも効率よく冷却する水冷方式のシステムの実証も行われています。

AIのインフラの要となる高負荷・高発熱のサーバーに対応する水冷システムを、現在検証中(画像は『MWC Barcelona 2025』での展示より)
AIのインフラの要となる高負荷・高発熱のサーバーに対応する水冷システムを、現在検証中(画像は『MWC Barcelona 2025』での展示より)

そして、自社で使用する電力を自分たちで生み出すこと。

「KDDIとして使っている電気を、auリニューアブルエナジーが太陽光発電した電力も活用しながら、再生可能エネルギーに切り替えていくことで、CO2排出量を削減していきます。これは、自社のCO2排出への対応であるだけでなく、再生可能エネルギーの普及・拡大による社会全体の課題解決と、新たなサービスの提供というビジネスの機会にもつながっていると考えています」(矢野)

auリニューアブルエナジーが目指す分散型エネルギーをつなぐ試み

では、栃木県小山市に蓄電所を開設したauリニューアブルエナジーとはどのような会社なのか、同社代表取締役社長の鈴木 吾朗が説明します。

auリニューアブルエナジー株式会社 代表取締役社長 鈴木 吾朗
auリニューアブルエナジー株式会社 代表取締役社長 鈴木 吾朗

「KDDIのエネルギー事業を、auエネルギーホールディングスという会社が一手に引き受けていて、その配下に3つの会社があります。『auでんき』など、電気の小売事業を行う『auエネルギー&ライフ』、法人向けの『ENERES』、そして私たち『auリニューアブルエナジー』は、主に太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの発電事業を担っています。

KDDIのカーボンニュートラルを再生可能エネルギーでサポートする一方で、今回の蓄電所のように、事業としての成長ももちろん見据えています」(鈴木)

蓄電所に設置されている大型蓄電池がどのように機能するのか、続けて鈴木は解説します。

「再生可能エネルギーの課題としてあげられるのが、年間通して電力の需要はある程度一定なのに、供給量は一定しないという点です。電気は、需要と供給のバランスをリアルタイムで保つ必要があり、これが崩れると周波数や電圧が乱れ、停電などのトラブルにつながります。需要と供給を完全に一致させるために、蓄電池を使って調整を行います。蓄電池は再生可能エネルギーを安定的に活用するうえで、重要な役割を果たす設備なのです。
再生可能エネルギーの普及に伴って、さらに蓄電池のニーズが増えると想定しています。」(鈴木)

蓄電池コンテナ内部の様子
蓄電池コンテナ内部の様子

さらに、小山蓄電所の蓄電池の用途について、補足します。

「この蓄電池は電力系統に直接接続しており、卸電力市場を通じて、電気の小売り事業者に販売することもできます。」(鈴木)

auリニューアブルエナジーでは、小山の14倍の出力を持つ第二の蓄電所を三重県津市に建設中。完成は2027年の予定です。鈴木は蓄電所事業を併せ持つことでの、将来のビジョンを語ります。

「従来、電気は、原子力や火力などで発電し、中央制御して個別に住宅やオフィス、工場などに送られてきました。ですが、今後、ご自宅の蓄電池や自家用EV車の蓄電池と接続するネットワークができれば、私たちの太陽光発電や蓄電池とあわせて、ご家庭や工場など小規模な発電装置による分散した電源を一括して調整する『VPP(Virtual Power Plant)』を構成することも可能となります」(鈴木)

再エネと蓄電所の活用で、小規模な電源を分散してつなぎ、一括管理するVPP
再エネと蓄電所の活用で、小規模な電源を分散してつなぎ、一括管理するVPP

「VPPは様々な電源を通信でつないで制御し、一つの発電所のようにする技術です。電力需要と電力供給のバランスをリアルタイムに制御するためには、高速で安定した通信ネットワークが不可欠ですし、通信会社ならではの強みを生かせる領域なのです」と強調します。

KDDIグループ初の蓄電所建設の先頭に立って

蓄電所事業の開始は、KDDIの環境目標実現に大きく関わるだけでなく、日本のエネルギー流通の仕組みの変換の礎にもなる可能性があります。auリニューアブルエナジーで、実際に蓄電所の建設を担当した三宅 祥太は、自身の仕事を振り返ります。

auリニューアブルエナジー 三宅 祥太
auリニューアブルエナジー 三宅 祥太

「蓄電所建設の難しさは、ある程度広い場所を要する点と、設備コストが高い点にあります。今回、初めての試みでしたので、社内的に太陽光/蓄電所建設に関する知見があまりないところからのスタートでした。

私自身、太陽光建設の施工監理の経験はあるものの、契約手続きや蓄電所設備の詳細設計については勉強しながら仕事を通して理解することになりました。開始から2年にわたるプロジェクトで、無事、竣工・運用にたどりつくことができました。

蓄電池は、再生可能エネルギーを安定して供給するために欠かせない施設です。小山からは直接、一般家庭への電力供給は行っていませんが、電力安定化のためには有効な設備になるかと思います。そういった意味で、日本の再生可能エネルギーの普及に貢献できるのは非常に嬉しいかぎりです」(三宅)

最後に、KDDIグループとして脱炭素社会の実現を目指して取り組んでいくなかで、エネルギー事業で取組む意義を、矢野と鈴木が語ります。

「事業を通じて膨大な電力を使う企業として、カーボンニュートラル実現を進めていくことは責務だと思っています。それだけでなく、グループ全体で、再生可能エネルギーを創り、広めることで、日本全体の脱炭素社会の実現に貢献できると考えています。この豊かな地球を未来につないでいくことが私たちの使命です。」(矢野)

「今年も異常な猛暑が世界各国で続きました。地球温暖化は人類にとって極めて深刻な状況ですよね。そんな中で私たちは、火力燃料由来でない再生可能エネルギーを発電する事業者として、発電所を設置する地域に寄り添いながら、次世代のみなさんが豊かに暮らせる未来を創り出したいと考えています。微力ながら社会、環境にとって意義のある事業を行っているというプライドを持ってこれからも取り組んでいきたいと思います」(鈴木)

太陽光から蓄電池へ、つなぐチカラの進化

AIによる電力需要は増大し、再生可能エネルギーへのニーズも意識も高まっています。こうした社会の要請や環境の変化に応じて、KDDIはエネルギー事業にさらに注力します。太陽光発電だけでなく、蓄電池事業にも拡張。つなぐチカラを進化させ、地域の暮らしをつないでいきます。そして、KDDIグループとして「2030年度にカーボンニュートラル実現」を目指します。

 

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