数多くの神社仏閣があり、豊かな自然にも恵まれている関東きっての観光地、神奈川県鎌倉市。歴史あるこの街では、多くの人がそこで撮った写真や動画をSNSにアップロードしたり、QRコード決済で買い物をしたり、スマートフォンを使って観光を楽しむ光景が見られます。今ではあたりまえとなった光景ですが、こうした観光体験の裏側には、コロナ終息後の通信需要の変化に対応するための、通信インフラの見直しと数々の工夫がありました。当時の急激な環境変化に対して、技術面だけでなく、地域の特性と向き合いながら通信の品質改善を実現した、KDDIグループの取り組みの裏側に迫ります。
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観光地としてにぎわう鎌倉。しかし通信環境の悪化が課題に
神奈川県鎌倉市は、鎌倉大仏や鶴岡八幡宮、由比ヶ浜など、多数の名所・名刹を誇る観光地です。コロナ禍によって一時は観光客数が落ち込んだものの、2022年には大河ドラマの影響もあり、鎌倉の人気が再燃。2024年の観光客は延べ1,600万人に迫るまでに回復しました。
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コロナ禍の間に、スマートフォンの使い方は格段に幅が広がり、生活を大きく変えました。QRコード決済を代表とした電子決済は、キャッシュレス化推進の影響もあり一気に普及。こうした変化は鎌倉にも押し寄せ、お土産屋や飲食店が軒を連ねる鎌倉駅東口から鶴岡八幡宮へと続く「小町通り」では、電子決済が広く使われるようになりました。また観光スポットでは、写真や動画などをSNSに投稿する人々も増加しました。もともと鎌倉エリアは、物理的な制約などから限られた設備でカバーしていたため、人の流れが元に戻ったことや、スマートフォンの利用拡大によって通信品質は急激に悪化。特に小町通り付近では、通信速度が極度に遅くなり、つながらない状況が頻繁に発生する状況になっていました。
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KDDIグループでは、各地の通信状況をとりまとめたビッグデータを常にチェックし、人気観光地については先を見据えた改善サイクルを回しています。鎌倉の通信状況についてはコロナ前から注視をしていましたが、コロナ終息後は、通常の休日でさえトラフィック(ネットワークを流れる情報)が過多となり、つながりにくくなっている状況でした。特に夏期休暇や年末年始など長期休みの時期には、多くの人々が訪れてスマートフォンを使うことから、一時的に通信が途切れてしまう事態も起こっていました。
KDDIエンジニアリングで通信の運用保守を担当する宮﨑 佑樹は、「一般的にトラフィックはどの地域でも年間で約1.2~1.3倍は増加しています。しかし鎌倉では2022年から2024年までの2年間で約2~3倍の勢いで増加し、すぐにでも対処しなくてはならない状況でした」と、当時を振り返ります。
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お客さまの声をもとにエリア改善を推進する、KDDI 品質管理部の村田 英行も、「お客さまからも『鎌倉で通信がつながらない』というお問い合わせが増えていました。同様の声はKDDI社内からも上がり、つながりにくいエリアや状況を調査したレポートを、自律的に提出する社員もいたほどです」と語ります。
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鎌倉は景観条例などの制約もあり、通信品質改善に向けた基地局の設置には、4~5年を要する想定でした。しかし、お客さまにご迷惑をおかけしている状況を重く受け止め、KDDIでは2024年の年末シーズンに向けて、約2年で新たな基地局の開設を目指すことに決めました。
「通信品質を改善する際、まずはアンテナの向きや角度を調整して、地域の基地局同士のトラフィックを分散させることを試み、その次は新しい周波数の追加や回線の増強、といった段階を踏んでいきます。しかし、鎌倉の通信状況は、そうした既存設備の調整で追いつくものではなく、新たに基地局を設置する以外に道はないと判断しました」(宮﨑)
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とはいえ、基地局の新設にはあらゆる調整が必要になります。KDDIエンジニアリングで基地局建設の進捗管理やサポートを担当する平元 貴志は、「基地局の設置では、技術的なことはもちろん、地域の方々にご理解いただくことや、景観へ配慮することが欠かせません。KDDIグループやパートナー企業のスタッフが、基地局を設置してくださるオーナーさまや近隣の方々と対話を重ねて、信頼関係を築いていきました」と話します。
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基地局は、人と人との信頼の上に成り立っています。基地局設置の必要性を丁寧にお伝えし、地域のご要望をしっかり受け止めながら、計画へと落とし込まなくてはなりません。また、既設の建物に基地局を建てる場合には建物の強度や電力の供給力などが関わってきます。加えて、今回の基地局設置においては、光回線という別の設備の敷設が必要なことがわかり、工期の長期化が予想されました。
鎌倉の通信品質の改善は待ったなしの状況でした。そこで、光回線の工事が完了するまでの間はStarlinkの衛星通信を代用し、「つながりにくい」という状況の改善を図りました。Starlinkを活用しながら、調整を重ね、2024年の年末には新しい基地局を稼働させることができ、2025年3月には光回線の敷設も完了。通信品質の大幅改善と安定化を実現しました。
社会や街の変化を予測して、さらなる品質の向上を目指す
通信環境が改善した現在、鎌倉の街角や商店ではストレスを感じることなくスマートフォンが利用できるようになりました。
「基地局新設による効果は顕著です。工事完了以後は、多数あったお客さま窓口へのお問い合わせも、現時点ではなくなりました。トラフィック状況の分析結果を見ても、通信を問題なく処理できています。KDDIグループのスタッフも定期的に現地調査を行い、通信品質が十分改善されていることを確認しています」(村田)
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通信は時代とともに移り変わります。音声通話のみだったのが、文字情報や画像なども送受信できるようになり、そして現在は動画配信も行われるなど、通信されるコンテンツは多様化し、容量も増加しています。
スマートフォンだけでなく、インターネットに接続された機器(IoT機器)も街中に増えてきています。さらに、都市の再開発や大規模商業施設の新規オープンなど、人の流れもダイナミックに変化し続けています。KDDIエンジニアリング 運用保守事業本部の廣瀬 愛は、こうした変化に対して気を緩めることなく改善を続けていきたいと意気込みを語ります。
「昨今は、万博のような大規模イベントをはじめとして、お祭りや花火大会、音楽フェスなどでスマートフォンが使われる場面が急増しています。KDDIグループは、そうした社会の変化にしっかりと追随していくだけでなく、これからの社会を予測して先回りして、通信環境や利便性の維持と向上に努めていきます」(廣瀬)
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今回ご紹介した鎌倉だけでなく、さまざまな事情によって通信品質の改善が難しい地域は少なくありません。しかし、いつでも、どこでも、誰とでもつながることのできる「安心・安全で快適」なコミュニケーション環境の提供は、通信事業者であるKDDIの使命です。
お客さまの声やご意見を真摯に受け止め、ビッグデータ分析による課題特定などの活動を続けながら、KDDIグループは「日常をつなぐ・非日常をつなぐ・空が見えればどこでもつながる」世界の実現に向けて、つなぐチカラを進化させていきます。
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