大阪・関西万博に“つながる安心”を届けたい!KDDIが挑んだ通信対策の裏側

大阪府・夢洲で開かれている「大阪・関西万博」。日本が未来の姿を世界に向けて発信するこの国際イベントには、毎日、国内外からたくさんの人が訪れています。

会場で楽しめる体験の多くは、スマートフォンを通じて提供されています。入場予約や館内の地図案内、キャッシュレス決済、そしてARやVRといった最新のコンテンツまで、通信が快適に使えるかどうかで、その楽しさは大きく変わります。

そんな通信環境を守るため、KDDIは準備段階から今に至るまで、目に見えないところでさまざまな工夫と調整を続けてきました。今回は、万博会場やその周辺エリアで、快適な通信環境をお届けするためにどのような準備がなされてきたのか、その裏側をご紹介します。

“まっさらな土地"から始まった整備

今回の大阪・関西万博の会場となった夢洲は、交通はもちろん、電気や通信設備も整っていなかった「まっさらな土地」。通常のイベント会場では、もともとある設備を使用できることが多いのですが、今回はゼロからの整備が必要でした。KDDIエンジニアリングの辰己 透は、当時をこう振り返ります。

KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 関西支社 辰己 透
KDDIエンジニアリング 西日本運用本部 関西支社 辰己 透

「通信環境整備のために、はじめて現地に行った時は、電源すらありませんでした。まずは車に積んだ基地局や、Starlinkなどの衛星通信を使って、可能な限り早急に“つながる”環境を作るところからのスタートでした。工事の条件などもまだ固まっていなくて、調整には想像以上の時間と労力がかかりました」(辰己)

4社共同の「シェアリング基地局」を導入

万博会場では、KDDI、NTTドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルの4社が同じ設備から電波を発信する「シェアリング基地局」を採用しました。国内ではまだ珍しい仕組みです。

会場に設置されたシェアリング基地局 写真提供:東出写真事務所
会場に設置されたシェアリング基地局
写真提供:東出写真事務所

KDDIエンジニアリングの黒瀬 達也はこう話します。

KDDIエンジニアリング 建設事業本部 モバイル設計本部 品質設計部 黒瀨 達也
KDDIエンジニアリング 建設事業本部 モバイル設計本部 品質設計部 黒瀨 達也

「通信がつながりにくくなる、電波同士の“ノイズ”を最小限に抑えるため、アンテナの出力を調整しました。また、開幕前には何度も現地に赴き、さまざまなテストを実施することで、通信がつながることを入念に確認しました」(黒瀬)

こうした調整は開幕前だけでなく、開幕してからもずっと続いています。

「人が集まる場所では通信が一時的に混み合います。そうした状況でも快適につながるよう、会場全体の電波状況を常にモニタリングし、通信品質の改善を行っています」(辰己)

通信品質を確認するためモニタリングを随時実施
通信品質を確認するためモニタリングを随時実施

2つの周波数を同時利用できる装置を初導入

今回KDDIが本格的に導入したのが、2つの電波の周波数を同時に使える「Dual Band Massive MIMO Unit(デュアルバンドマッシブマイモユニット)」(以下、DB-MMU)という無線装置。限られた場所でも多くの人を一度につなげることができ、速度も安定します。

会場に設置されたDB-MMU(赤枠部分)
会場に設置されたDB-MMU(赤枠部分)

KDDIモバイルアクセス技術部の高相 一輝はこう語ります。

KDDI ノード技術本部 モバイルアクセス技術部 高相 一輝
KDDI ノード技術本部 モバイルアクセス技術部 高相 一輝

「この装置を用いることで、人が集中する場所でも、効率よく多くの方をつなげます。アリーナのように混雑するエリアでは特に効果が大きかったですね。会場で安心して使ってもらえるよう、現地で何度も検証しました」(高相)

屋内の電波も工夫

通信の設計は屋外だけではありません。屋内パビリオンでは、壁の素材や構造によっては、思わぬ電波のトラブルが起こることがあります。KDDI建設管理部の大黒 雅史はこう説明します。

KDDI エンジニアリング本部 建設管理部 大黒 雅史
KDDI エンジニアリング本部 建設管理部 大黒 雅史

「壁が布製だと外からの電波が入りやすく、それが逆につながりにくい原因になることがあります。そうした場合は屋内の電波をあえて止め、外からの電波をコントロールする方法に切り替えます」(大黒)

このように、会場内における通信対策は一筋縄ではいかず、その建物やエリアごとに、人の動きや空間の形まで考えて、最適なつながり方を作っています。

会場外や道のりまでサポート

通信対策は万博会場の中だけではありません。夢洲周辺の道路やバス発着所、駐車場など、来場者が移動する道のりもカバーしています。

多くの来場者が夢洲駅を利用
多くの来場者が夢洲駅を利用

「夢洲は通信が届きにくい場所も多く、早い段階で基地局を新設しました。他社の鉄塔を使わせてもらうなど、さまざまな関係者と協力しながら、時間が限られる中で効率的に整備を進めていきました」(黒瀬)

会場付近に新設した基地局
会場付近に新設した基地局

どこから来場してもつながるよう、KDDIでは会場全体だけでなく、その前後の移動も通信体験として捉え、対策を講じています。

万博会場から一番近い桜島シャトルバス乗り場にて、複数のスマホを使用して通信品質の調査を実施
万博会場から一番近い桜島シャトルバス乗り場にて、複数のスマホを使用して通信品質の調査を実施

大阪・関西万博をつなぎ続ける

大黒は今回の経験をこう振り返ります。

「イベント向けの通信設計は、いまだに業界全体で“経験則”に頼る部分が多いのが現状です。今回の取り組みで予測の方法や機器設定の標準化など、次につながる手法が見えてきました。また、4社によるシェアリング基地局を使った対策など、万博で得た知見は、今後の大規模イベントでも必ず役立つはずです」(大黒)

高相も続けます。

「新機能を取り入れることで、基地局をより効率的に、高い品質で使うことを目指しています。事前の情報集めにはかなり苦労しましたが、日々多くのお客さまが万博を楽しんでいる姿を見ると、我々も通信品質の改善に貢献できているのではないかと捉えています。今回の知見を踏まえ、さまざまなイベントで活かせる基地局を設計し、より良い品質のサービスをお客様にご利用いただくことを目指していきたいです」(高相)

万博を存分に楽しむために欠かせない存在となっているスマートフォン。スムーズにつながる背景には、最先端の技術に加えて、通信対策を担うスタッフの工夫と地道な準備がありました。大阪・関西万博の閉幕まで、会場や周辺の通信品質を見守り、改善しながら、技術部門をはじめとしたあらゆる部門が連携し、快適な通信をつなぎ続けます。

KDDIは今後も、「ずっと、もっと、つなぐぞ。au」というスローガンのもと、全国各地でサービスエリアの拡充やイベント対応にも取り組んでいきます。

 

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