「夢中」が未来をつくる原動力―KDDI松田新社長が語る“目指す姿”と3つの挑戦

2025年4月10日、KDDIの代表取締役社長 CEO松田 浩路が、就任会見で、KDDIの未来像について語りました。会見では、個人としての原体験からKDDIの目指す姿、そして“通信とAI”の融合がもたらす社会への価値創出まで、幅広い内容を発信。そこに共通していたのは、「夢中こそが、新たな挑戦、新たな進化への原動力である」という強い信念でした。

KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路
KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路

追求し続けたのは「いかによりよい通信を実現できるか」

会見の冒頭、Netflix、Qualcomm、Foxconnといった世界有数のテクノロジー企業の各CEOから社長就任のお祝いと激励のメッセージ動画を受けて壇上に立った松田は、テクノロジーに対する思いや、自身の“原点”ともいえる原体験を振り返りました。

「現在の私につながる大きな出来事として、1985年の『つくば科学万博』があります。中学生の私は、日本の大手企業による最先端サイエンスの展示に、待ち時間も苦にならず、すっかり夢中になりました。新しいテクノロジーこそが未来を作るんだ、そう確信したことを今でも覚えています」

科学と技術がもたらす未来の可能性に強く心を動かされたこと。それがKDDIという通信会社での30年のキャリアにつながっています。松田は、通信という仕事に身を置き、「いかによりよい通信を実現できるか」を追求し続けてきました。特にこだわってきたのは「通信の品質」です。

その成果の1つが、世界的な通信評価機関のOpensignal社による「つながる体感 世界評価No.1」*1を獲得できたことです。もちろん、まだまだ高みを目指して挑戦を続けていきます。

「KDDIの確かなネットワーク品質は、あくまでも「土台」だと考えています。私たちが2030年ビジョンとして掲げている『つなぐチカラを進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。』の『つなぐチカラ』とは、単に通信を意味しているわけでありません。『つなぐチカラ』とは、命を、暮らしを、心をつないでいく。そこに価値を生み出していくチカラです。『誰もが思いを実現できる社会をつくる。』をこれからも継承していきたい。この目標の実現のためには『つなぐチカラ』の進化が不可欠です」

5GとAIが生み出す新たな価値とは

その“進化”の鍵を握るのが、「AI」です。松田は通信とAIが組み合わさることが重要だと考えています。「5GがAIによって、さらに進化していくのです」と強調し、次のように続けます。

「いまや流行語のようになっているAIですが、KDDIのAIとは具体的に何なのでしょうか。KDDIは通信によって膨大なデジタルデータとAIをつなぎます。それを実践し活かす力があります。通信、デジタルデータ、AIから生まれる新しい価値を創出し、お客さまへの提案を加速させていきます」

その代表的な取り組みとして、「AIマーケット」の立ち上げを発表。KDDIはAIサービスの提供パートナーを集め、お客さまが自分に合ったAIサービスに出合える場を提供します。加えて、提供パートナーに対しても事業拡大や海外展開を支援する方針です。

また、これらのAI普及のための土台として、2025年度中の本格稼働に向け大阪府堺市で「大規模AIデータセンター」の準備を進めています。最新のGPUを導入したこのデータセンターには、Googleの生成AI「Gemini」を組み込みお客さまへ提供していくべく、Google Cloudと合意しました。

「通信は、AIでますます進化します。そしてAIも、通信が生み出す『つなぐチカラ』で社会に役立つものへと進化するはずです。あらゆるシーンで、お客さま一人ひとりとその最適解とをつないでいく、それがKDDIのAIが目指すところです」

「夢中」になることが新たな挑戦を可能にする原動力

AIマーケット構想やAIデータセンターなど、こうした挑戦を成功させるには、松田が好きな言葉として挙げる「準備万端」と「先手必勝」が重要です。

「準備というと、転ばぬ先の杖のような守備的なイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。先手必勝を実現するために、常に先手先手で動き、準備万端でいようということです。新たな『挑戦』を成功させるために、私たちは常に『準備万端』『先手必勝』でありたいと思います」

また、挑戦の成功のためにもう1つ必要なのが、社員一人ひとりが「夢中で取り組むこと」だと、力を込めます。

「私がかつて新しい技術に夢中になったように、すべての社員に『夢中になる』機会をつくりたいと思います。好きこそものの上手なれ。KDDIには、夢中になって取り組めるものを持っている社員がたくさん集まっています。そんな『夢中』こそが私たちの原点であり、新たな挑戦、新たな進化への原動力です。私がつくっていきたいKDDIは、『夢中に挑戦できる会社』です」

その象徴的なエピソードとして松田が紹介したのが、スペイン・バルセロナで開催された世界最大級のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2025」への出展です。100名を超えるプロジェクトチームの中心を担ったのは、20代から30代の若手社員たちでした。自ら立候補し、世界の舞台でKDDIの技術とビジョンを発信したのです。

「夢中になって取り組んでくれた彼らからは、『世界のトレンドを肌で感じられた』『各国のCEOに直接説明する機会を得られた』など多くの声があがりました。世界を舞台に夢中で挑戦する場面を、これからもどんどん作り上げていきたいと強く感じました」

3つの挑戦で、「つなぐチカラ」を次の次元へ

会見の後半では、KDDIの目指す姿「夢中に挑戦できる会社」と3つの挑戦に言及しました。挑戦は、「未来をつくる仲間とつながる。」「つなぐチカラを世界に広める。」「お客さまの今とこれからにつながる。」ことです。

・未来をつくる仲間とつながる。

KDDIは「Tomorrow, Together.」というスローガンを掲げ、自前主義にとらわれず、多くの仲間と一緒に個性を生かして目標を達成していく考え方があります。今後は、パートナーとともに作り出した価値をさらに広げていくための仕組み作りが求められます。

KDDIの本社を「TAKANAWA GATEWAY CITY」に移転するのもその一環です。高輪は、江戸時代は海であり、江戸と日本各地を結ぶ交流の玄関口であり、また、明治時代には、日本初の鉄道が海の上を走ったイノベーションの地でもありました。交流とイノベーションの地であった高輪を、日本発のイノベーションを創出していく、「未来の実験場」として位置付け、「未来をつくる仲間とつながる場所」にしていきます。

「高輪では1万3千人のKDDI社員のデータを活用し、あらゆる実験を行っていきます。例えば、カメラやauの位置情報をもとに、混雑していないルートを見つけてデリバリーするロボットなど、実験した取り組みをKDDIの法人ブランド『WAKONX』を通じて提供します。このスマートシティの取り組みを高輪以外の都市にも拡大し、将来的には世界にも広げていきたいです」

・つなぐチカラを世界に広める。

KDDIはAppleやGoogle、Netflix、SpaceXといった多くのグローバル企業とのパートナーシップを進めています。しかし、まだ世界で戦うためには足りない部分もあると松田は言います。

「日本は社会課題の先進国です。日本の少子高齢化や災害支援のソリューションモデルを、例えばAIドローンで作ることができれば、海外へもその価値を広げ、課題解決を実現できるはずです。日本の成功モデルを世界に広げていく。そんなビジネスにもっとトライしていきたいと思っています。もちろんその場合も自前だけでとは考えていません。さまざまな仲間とともに、挑戦したいと思っています」

また、KDDIはベンチャー企業への出資を行う「KDDI Open Innovation Fund」を通じて、スタートアップへの投資を進め、世界に挑戦する企業を支援しています。

「AIやディープテック分野における日本起点のスタートアップを、より成長させることを目的に、複数の海外ベンチャーファンドへの出資も決定しました。出資総額は300億円規模を予定しており、日本のスタートアップとともに世界へ出る挑戦を行っていきます」

・お客さまの今とこれからにつながる。

KDDIは「ライフ=生活をささえる会社」から、「ライフ=人生をささえる会社」へと進化し、一人ひとりのお客さまにとっての「いい未来」をともに作っていく、そんな存在を目指しています。例えば、au SHOP CARやローソンとのパートナーシップで生まれる新しいコンビニは、販売という機能にとどまらず、地域の見守りや防災、移動、配送拠点としても機能します。

「『つなぐチカラ』によって、新しい地域貢献、新しい地域活性を実現する拠点になれると考えています。お客さまの『今』だけではなく、これからの『いい未来』につながるような挑戦をしていきます」

最後に、会見を締めくくる松田の言葉には、「夢中に挑戦できる会社」を目指すKDDIの決意が凝縮されていました。

「今年は通信自由化から40年、KDDIも発足25周年の節目の年になります。先人の皆さんの努力と挑戦の歴史によって、『つながって当たり前』と思われるほど通信は発展をしてきました。でも、まだまだです。ここでまたひとつ、通信のチカラを進化できます。『つなぐチカラ』を、新たな次元にアップグレードできます。それを実現する原動力は、夢中になること。失敗を恐れず、新しいことをつくり続けていく。準備を怠らず、誰よりも先んじて、全社員の夢中のパワーで、信じるものを形にしていきます。どうか、ご期待ください」

*1 「つながる体感」世界評価No.1とは、Opensignal社によるグローバル・モバイル・ネットワーク・エクスペリエンス・レポート「信頼性エクスペリエンス」評価などに基づき、au回線を通じて、ネットワークに接続した際にお客様にとってより快適で安定したサポートを実現することを指します。詳細はOpensignalウェブサイトをご覧ください。
十分にデータ収集が可能な国土面積200,000km2以上の国々のすべてのモバイル・ネットワーク・オペレーター(41カ国、142 MNOs)で構成され、各国でOpensignalが認める共通の評価基準に基づいて値を比較。データ提供期間2024年7月1日~12月27日  ©Opensignal Limited.
信頼性エクスペリエンス:通信サービス・プロバイダのネットワークに接続し、タスクを完了する能力を評価する指標

関連リンク(外部サイト)

この記事をシェアする

このページに興味・関心がもてましたか