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高まる通信品質の期待に応えるために 技術部門トップが語るKDDIの挑戦

KDDIの使命は“つなぐ”ことです。24時間365日途切れることなく、いつでも、どこでも、誰とでもつながることのできる「安心・安全で快適な」コミュニケーション環境を提供することは、いつの時代においてもKDDIにとって最大のテーマであり、これまでも日々改善を続けてきました。

この取り組みが実を結び、通信品質に関する第三者評価機関であるOpensignal社(以下、Opensignal)が2024年10月に発表した日本市場「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」で、全18部門のうち13部門で1位*1を受賞することができました。長年にわたり品質改善を指揮してきたKDDI 執行役員専務 CTO コア技術統括本部長の吉村 和幸に、決して妥協することのないその信念と歩みについて話を聞きました。

● 通信品質を追求するKDDIの「徹底したこだわり」とは

KDDIは、より快適で信頼できる通信環境を提供するため、通信品質の向上にこだわり、さまざまな改善施策に日々取り組んでいます。

その理由について、運用や開発をはじめとした部門で30年以上にわたりKDDIの通信を守り続けてきた吉村は、「通信品質を高める上で最も大切にしているのは、お客さま目線です。よく使われる最大ダウンロードスピードや、人口カバー率などの数値もありますが、私たちKDDIとしては、実際に、お客さまが必要なとき、必要な場所で快適に通信を使えることが重要だと考えています」と強調します。

KDDI 執行役員専務 CTO コア技術統括本部長 吉村 和幸KDDI 執行役員専務 CTO コア技術統括本部長 吉村 和幸

通信品質を維持・改善するためにKDDIでは、自社で蓄積したビッグデータや、お客さまの声をベースとして、全社横断で取り組んでいます。特にここ数年は、「パケ止まり」の抑止など、通信が途切れたり遅くなったりする課題の改善活動に注力してきました。

「5Gの展開では、生活動線である鉄道や商業地域を優先的に整備し、5Gエリアの着実な拡大に努めました。4G LTEの初期展開時に、通信がつながりづらくなる『パケ止まり』が頻発するということがありました。その経験を糧にして、5G初期展開時には3Gから4G LTE時代に蓄積した各種チューニング技術を駆使して、『パケ止まり』を防ぐ取り組みを徹底しました」

通信品質の向上において、「パケ止まり」を改善することは、非常に重要で、KDDIはこれまで継続して取り組んできましたが、お客さま体感を高めるには、それだけでは不十分になってきています。

スマートフォンを使い、現地で通信品質を調査スマートフォンを使い、現地で通信品質を調査

吉村自ら、現地の調査へ足を運ぶことも吉村自ら、現地の調査へ足を運ぶことも

その背景にあるのが、近年の通信をとりまく状況の変化です。ここ数年、スマートフォンを取り巻く環境が大きく変化し、特に、ライブビデオやオンラインゲームでは、リアルタイムでのデータ処理が必要となり、わずかな遅延や通信の途切れでも体験に大きな影響が出るため、より厳しい通信品質が求められるようになっています。そうしたお客さまのニーズを満たすには、従来の改善方法に加え、さまざまな視点での対策が必要となってきます。

● お客さま体感品質向上へ!戦略的に地道な取り組みを継続

KDDIでは、お客さま体感品質をさらに向上させるべく、技術部門のメンバーを中心に、グループ会社や関連するパートナー企業など、総勢数百名におよぶチームで対応を検討し、何が効果あるのか、知恵を出し合いました。

「品質改善には“飛び道具”はありません。地道にネットワーク全体の通信経路を見直したり、チューニングの点検を全国くまなく実施し、この半年間で100近くの改善施策を、試行錯誤を繰り返しながら進めていきました。スマートフォンなどのユーザー端末からインターネットまで、End to Endで全体を最適化するための体制を構築し、各層に精通したメンバーを集めて、例えば、従来のRAN(無線アクセスネットワーク)区間の改善や、ネットワーク全体の遅延改善に向けた具体的な施策検討を行いました」

運用の現場ではネットワークの状況を監視運用の現場ではネットワークの状況を監視

加えて、大容量・高品質5G(Sub6*2)を含めたKDDIが保有する周波数全体をどのように活用するかという周波数戦略も重要でした。

吉村は「当初は衛星通信との干渉を防ぐために、Sub6基地局の出力を上げる事ができず、Sub6でのエリア構築に制限が生じていました。そのため、まずは4G周波数の転用による連続的な5Gエリアを整備し、その上にSub6を重ねる戦略を採用しました」と振り返ります。

その後、衛星通信事業者のご協力もあり、2024年3月末に干渉条件が緩和され、Sub6の出力を上げる事ができるようになりました。これにより、ネットワークのパフォーマンスが向上し、XRや動画、ゲームといった高速大容量、低遅延が求められる「5Gらしい」使い方が可能になりました。

「干渉条件の緩和により、今回の大きな取り組みの1つであるSub6の出力アップにつながり、さらなる品質向上を実現できました。こうした改善施策が実を結び、今回のOpensignalでの13部門での1位受賞につながったと考えています」

13部門の中では、一般的なモバイル・アプリケーションを遅延や速度低下なしにサポートする能力を測定する指標の「一貫した品質」のほか、ネットワークへの接続性や、ライブ配信・動画・ゲーム利用時に中断することなく一定の品質を維持し、タスクを完了する能力を総合的に評価する「信頼性エクスペリエンス」でも1位を獲得しました。

● AIも活用し、進化し続ける「つなぐチカラ」の未来像

通信は、もはや社会基盤として生活やビジネスに欠かせないインフラの1つとなっています。これからの時代、社会環境や技術の進化、お客さまニーズの多様化により、さらにその重要性が高まっていきます。吉村はこうした変化に対応し、通信品質を守るためには、現状に満足することなく、新たな課題や技術に挑戦し続けることが必要だと考えています。

KDDIの電波をキャッチできるアンテナを背負い、タブレットでモニタリングを行う

「3G・4G LTE時代に培ったチューニング技術・ノウハウを生かし、データドリブンでの劣化検知や分析の自動化を進めることで、品質基準の策定と効率化を行い、高品質を実現するとともに、コスト最適化を図っています」

また、さらに先を見据え、AI/IoTデータトラフィックへの対応を進めているだけではなく、ネットワーク自体の変革に向けた検討も行っており、2030年度には、生成AIが協調し、人の介入は最小限で維持する「自律化ネットワーク」の構築を目指しています。

「KDDIは現在、5G基地局数において業界最多*3を誇っています。最高品質のネットワークで5Gならではのサービスを提供し続けることが私たちのミッションです。2030年に向けて通信は、AIが融合され、社会基盤としてますます重要な存在になっていきます。通信はすでに私たちの生活に欠かせない存在となっており、通信の安定性を守るための基準はこれまで以上に高まるでしょう。社会も技術も変化し進化を続ける中で、KDDIも立ち止まることなく、通信品質に代表される『つなぐチカラ』を進化させていきます」

*1:Opensignal アワード - 日本: モバイル・ネットワーク体感レポート(2024年10月)
2024年7月1日~2024年9月28日の期間に記録されたモバイル測定値の独自分析に基づく。
詳細はOpensignal社HPをご覧ください。© 2024 Opensignal Limited.
*2:Sub6とは5Gの高品質な(高速・大容量・低遅延)通信に寄与する周波数帯のうち3.7GHz帯/4.0GHz帯/4.5GHz帯の通称。一部エリアで提供。
*3:総務省「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設計画」令和5年度 第二四半期末時点。

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