小さな工夫で大きく貢献!SIMカード台紙のコンパクト化でCO2削減
持続可能な社会に向けて、気候変動問題への対策が世界各国で広がりを見せる中、日本政府は、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を2050年までに実現することを目指しています。KDDIグループはこの目標を積極的に進めるべく、2024年5月に「カーボンニュートラル新方針」を策定し、脱炭素社会実現への取り組みを加速させています。
この方針では、2030年度末までにKDDI自身が排出するScope1+Scope2のCO2排出量を実質ゼロにするとともに、2040年度末までにKDDIの事業活動に関連する自社以外の排出であるScope3を含むサプライチェーン全体からのCO2排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」という新たな目標を設定しています。
サプライチェーン全体像
KDDIグループの「ネットゼロ」に向けたロードマップ
その目標の実現に向けて、KDDIグループではサステナブル基地局の運用や、カーボンニュートラルを推進するサービスの開発など、さまざまな取り組みを行っています。その中から、実際にお客さまにお届けする商品や、ご利用いただくサービスにおける、カーボンニュートラルに向けた取り組みを、KDDIグループの目指す姿とともにご紹介します。
● 「ハーフサイズSIM」台紙で空輸時のCO2を30%削減
KDDIは2024年6月3日より、プラスチックの台紙を半分のサイズにしたSIMカードの提供を開始しました。スマートフォンなどの携帯電話に差し込んで利用するSIMカードは、台紙からチップ部分を切り離して利用しますが、その台紙の大きさを半分にすることでCO2排出量の削減に貢献しています。
従来品のSIMカード(左)と台紙をコンパクト化したSIMカード(右)
そのSIMカード台紙のコンパクト化に取り組んだ、KDDI 購買本部 購買部 髙橋 友紀と中野 正樹は、この取り組みの難しさについて次のように話します。
「SIMカード台紙を半分のサイズにする取り組みの着想は2013年からありましたが、SIMカード台紙は国際的な規格のもと、クレジットカードと同じサイズで製造されてきました。そのため、サイズを変更しようとすると、専用の製造設備などを整備する必要があり、容易には実現できないという事情がありました」(中野)
KDDI コーポレート統括本部 購買本部 購買部 中野 正樹(取材当時)
続けて髙橋は「ほかにも台紙にはSIMカードの個別番号であるICCID(集積回路カード識別子)やPINロック解除コード、問い合わせ先の電話番号などの情報が記載されているため、コンパクト化することでスペース的にそれらの情報を印刷できなくなる課題もありました。またauショップの店頭などに設置されているSIMカードリーダーの規格と合致するかといった懸念もありました」と説明します。
KDDI コーポレート統括本部 購買本部 購買部 髙橋 友紀
このような事情から一度は見送られたこのSIMカード台紙のコンパクト化ですが、近年のカーボンニュートラルへの取り組みが加速していく中で、2023年より再度、この取り組みにチャレンジ。そして、2024年6月よりハーフサイズSIMカード台紙の提供を開始しています。
台紙を削減することで、記載する情報が少なくなってしまう課題は、関係する法令に抵触しないように法務部門などの関連部署と連携しながら対策を進め、一部の情報はQRコードを読み取ることで、ウェブサイトで確認できるようにする工夫を行いました。また、コンパクト化することでSIMカードリーダーでの読み書き取りに問題が生じないかの検査も実施。着想当時に課題のあった製造設備については、すでに欧州からの要請でコンパクトサイズのSIMカード台紙が製造開始されていたため、短期間でプロジェクトを進行することができました。
「コンパクト化することで、製造時のプラスチック使用量を約55%削減し、航空輸送におけるCO2排出量を約30%減らすことができました。また、台紙が小さくなったことで、梱包サイズや梱包材の使用も大幅にカットされ、SIMカードの航空輸送だけでなく、陸上配送時のCO2排出量削減にもつながっています」(髙橋)
一見、小さな変化にも感じられるSIMカード台紙のコンパクト化ですが、カーボンニュートラルに大きく貢献しています。
● 太陽光と蓄電池で再エネ利用を加速させる「じたく発電所サービス」
KDDIのサプライチェーンにおけるCO2削減の取り組みに加え、KDDIグループでは、お客さまご自身がCO2削減に貢献できる取り組みも開始しています。日本政府が策定した第6次エネルギー基本計画では、2030年度における再生可能エネルギー(以下、再エネ)を国内総発電量の36~38%とする目標が示されています。これは2019年度の国内再エネ占有率・約18%のほぼ2倍の数値であり、今後は太陽光を中心とした再エネの普及・拡大が大きな課題となっています。
「目標達成のため、さまざまな取り組みが行なわれていますが、家庭での太陽光発電システムの普及率は約6%に留まっています」と話すのは、auエネルギー&ライフ VPPサービス部 長田 俊です。
auエネルギー&ライフ VPPサービス部 部長 長田 俊
同社は2022年にKDDIのエネルギー事業を承継し、提携パートナーとともに、よりお客さまのニーズに即したサービスの提供を目指して事業を開始しました。「でんきのチカラで未来をツナぐ」を企業理念に掲げ、電力小売サービスの「auでんき」を基幹事業とし、CO2削減・再エネ事業を展開しています。2024年度には新たに「じたく発電所サービス」と「スマート節電 with Nature Green」の2つのサービスを開始しました。
「じたく発電所サービス」は、一般的に数百万円の導入コストを要する太陽光発電システムと蓄電池を初期費用無料で利用できるサービスです。太陽光で発電した電気を使用した分の料金だけ支払うという料金形態で、一般的な電力会社の電気料金よりも安価に利用できます。また、京セラ株式会社の高品質で信頼性の高い太陽光発電システムと蓄電池がセットとなっているため、災害などによる停電時でも電気を利用できるメリットもあります。
将来的には、じたく発電所サービスで設置した蓄電池を遠隔で制御し、お客さまのエネルギーマネジメントを行うことを計画しています。また、サービスに加わる数多くの蓄電池を束ね、タイミングよく充電・放電し、電力ネットワーク全体の発電量と需要量のバランスを保つことにも貢献していきます。各家庭の蓄電池を束ねることで大きな電力を供給する「発電所」のようにふるまうことが可能となります。
「多くの蓄電池などを束ねて制御する技術は『VPP(バーチャル・パワー・プラント:仮想発電所)』と呼ばれていて、KDDIグループはこの分野において日本でも有数の知見を持っていると自負しています。このVPPによるエネルギーマネジメントサービスへの発展により、お客さまに新たな価値を提供し、お客さまと一緒に脱炭素社会の実現を目指していきたいです」(長田)
じたく発電所サービスは、利用することでお客さま、及び提供するKDDIも再生可能エネルギーの普及促進に貢献できます。災害時などのもしもの時の備えとして、そしてカーボンニュートラルを推進するサービスとして、今後の展開が期待されています。
● 自動制御で手軽に節電をサポートする「スマート節電 with Nature Green」
「スマート節電 with Nature Green」もまた、auエネルギー&ライフが提供するCO2削減に貢献するサービスです。同サービスの企画立案から関わったのが、auエネルギー&ライフ 事業企画部の斉 迪です。
「このサービスは、auでんきをご契約のお客さまを対象に、Nature株式会社のスマートリモコン『Nature Remo Lapis』を利用していただくものです。お客さまのエアコン利用傾向や節電意向を分析し、エアコンを自動制御することで節電が可能となり、ひいては間接的にCO2排出量の削減に貢献します。『頑張らない、ここちよい自動節電』がその本質です」(斉)
auエネルギー&ライフ 事業企画部 斉 迪
スマートリモコン・Nature Remo Lapisは、「Lapis=石」のような外見。エアコン作動状況を分析して自動で節電する「オートエコ」、現在の室温を把握してゆっくりと温度を調整する「コスパ起動」、一定時間家に誰もいない時に作動する「消し忘れアラート」といった機能を搭載しています。スマホから電力量の確認が可能で、どれだけ電気代を削減できたかの目安を日々知ることができます。また、オートエコを利用した場合、1ユーザー1時間あたり平均で0.18kWの電力を削減できます。ユーザーが多いほど電力削減効果は高まり、より大きな環境貢献が期待できます。
「実際にこの夏に利用を開始したお客さまからは『自動制御によって節電ができている』『オートエコ機能で就寝時にエアコンの寒さで起きることがなくなり睡眠の質が上がった』など節電効果や快適性への満足度が伺える感想が寄せられています」(斉)
KDDIグループでは他にも、環境省が推進する「グリーンライフ・ポイント」事業における、au PAYを通じた環境に配慮した活動や、auショップなどで使用する手提げ袋を、プラスチックを一切使用しない紙製の袋に変更するといった、お客さまの暮らしに身近なカーボンニュートラルの活動を進めています。
さらに、通信設備の省エネルギー化を図るサステナブル基地局やデータセンターの導入、自治体やパートナー企業との連携による取り組みなど、幅広い視点でCO2削減し環境負荷の軽減に努めています。
KDDIグループはこれからも、お客さまやパートナーの皆さまとともに、持続可能な社会の実現を目指し、カーボンニュートラルへの挑戦を続けていきます。