「日本全国どこにいても、ずっとつながる5G」を目指すKDDIは、これまで多くの人々の生活動線である商業地域や鉄道路線沿いを中心に5Gのエリア化を進め、「日常」をつないできました。
サービス開始から3年が経過した今、これまで注力してきた「日常」に加え、「非日常」でご利用される場所、例えば全国各地のレジャースポットでも5Gエリアが広がっています。
通信の高速大容量化に伴い、レジャースポットでスマートフォンを活用する機会も増えています。思い出を動画で共有したり、キャッシュレスでスムーズに決済したり、アトラクションの待ち時間を検索したり、動物たちの解説を動画で試聴したりする際には、快適な5G通信が欠かせません。
KDDIでは、東京都恩賜上野動物園、旭川市旭山動物園、エスコンフィールドHOKKAIDO、法隆寺、国立競技場、アクアマリンふくしま、豊田スタジアムといった観光地やレジャースポットで5Gのエリア化を完了しており、今後も対応を進める計画です。
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思い出づくりをより楽しく快適なものにするために。KDDIはレジャースポットの5Gエリア化を推進していきます。
思い出づくりの場所で快適な通信を—レジャースポットの5G化にかける思い
これまでに比べて10倍の高速通信が可能に―。KDDIが暮らしをより快適にする5Gの提供をスタートしたのは2020年春のことでした。
「サービスのスタート時には、東京五輪やラグビーのワールドカップに向けて、5Gのエリア化を進めてきました」と、当時を振り返るのは、KDDIエンジニアリング モバイルプロセス本部の中谷和貴です。国際的なスポーツイベントの会場や動線の5Gエリア化に加え、日々の暮らしを快適にすることを目指して商業施設や鉄道沿線にも5Gエリアが広がっています。
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サービスの開始から3年がたち、5Gを使ったサービスやコミュニケーションが暮らしの中に定着してきました。
「球場や動物園、テーマパーク、神社仏閣など、人が集まるレジャースポットで快適に5Gが使えるよう、日々取り組んでいます」
一筋縄ではいかないレジャースポットの5G化
レジャースポットの5G化にあたっては、さまざまな課題があると中谷は話します。
「構造が特殊だったり、基地局の設置が制限されていたりするところが少なくないので、現場での細かい調整は欠かせません。図面だけ見て設計しても、なかなかうまくいかないんです。現地に行ってこそわかることがたくさんあるんです」
レジャースポットのどこに人が滞留するのか、電波の性質上、回り込みづらい5Gの電波を人が滞留する場所に届けるには、どこにどれだけの基地局をどんな角度で設置すればいいのか、景観を損ねない形で電波を飛ばすにはどのような設置方法が有効なのか、といったように、場所に応じた細かい調整を行いながら基地局の設置を進めます。
例えば神社仏閣は景観を損なわないよう、近くの鉄塔から建物に向かって電波を飛ばすよう基地局を設計しています。
スタジアムも、最近は複合エンターテインメント施設としての役割を担うようになってきたことから、これまでとは異なる視点での設計が求められています。
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「今後は北海道ボールパークのように、スタジアム周辺の商業施設と一体化したエンターテインメント施設として展開するところが増えてくると予想されます。これまでは観客席でのつながりやすさを中心に設計してきましたが、これからは、スタジアムと商業施設の両方の特徴をとらえた基地局の配置を考えることになります」
思い出づくりの場で「5Gを使えてよかった」と実感できるように
「レジャースポットは、残しておきたい思い出がたくさん生まれる場所です。5Gなら、そんな思い出のシーンを高解像度の画像や8K動画(現在のハイビジョンの16倍の画素数を持つ映像)で撮影した動画もその場で共有しやすくなるので、普段よりも『使えてよかった』と実感していただけるかもしれません」
レジャースポットの5Gエリア化の効果について、中谷はこう話します。
「5Gを使えてよかった」と思っていただけるレジャースポットをさらに増やして、生活をより豊かで楽しいものに。KDDIは人が集まる場所で快適につながる5G環境をつくっていきます。
5Gのエリアづくりはここから始まる——「企画」「開発」「検証」
5Gのエリア拡大は、企画、開発、検証、設計、工事、品質管理、運用といった段階を踏んで進んでいきます。ここでは、企画、開発、検証について紹介します。

企画:「線」と「面」の拡大で、5Gがずっとつながるように
企画部門は、5Gのエリア拡大の計画を立てる部門で、5Gのエリアづくりのスタート地点となります。より多くのお客さまに使っていただきたいという信念のもと、その生活動線やライフスタイルを考慮しながらエリアの拡大を計画していきます。
5Gエリアを「点」として構築していくのではなく、お客さまが通勤や通学で利用する鉄道路線の連続性を意識して、「線」としてのエリア拡大にこだわっています。また、通勤・通学時のみならず、休日におけるお客さまの行動も考慮して、主要ターミナル駅の周辺などの商業地域においては「面」としてカバーできるように計画しています。
「線」と「面」とをつなぐことで、より多くのお客さまが日常生活を送る場所で、5Gが途切れることなく利用していただけるようになります。
こうした計画は、4G LTEの通信状況や駅の乗降者数などにより、利用する皆さまのトラフィック状況を客観的に測るとともに、直接お客さまに接している営業スタッフの意見も取り入れながら、おおよそ1年後を見据えて企画を進めています。
開発:エリアの特性に応じた機器および機能の開発
開発部門は、au基地局で使う機器および機能をパートナーとともに開発し、工事部門をはじめとする関連部門と連携しながら商用展開するまでを管理します。
ただし、ひとくちにau基地局といっても、同じ機器を全国展開すればよいというわけではありません。なぜなら、都市部や地方といったロケーションごとに、発生するトラフィック量やカバーしたいエリアの広さが異なるからです。つまり、場所に応じて性能の異なった機器構成や機能(キャリアアグリゲーション等)が求められるということです。これに応じた開発をすることで、構築・運用にかかわるコストを最適化し、5Gに対応するau基地局も早期に拡大できてより多くのお客さまに5Gを利用いただけるようになります。
KDDIでは、5Gのサービス開始当初、4Gの機器を5Gに対応させるNSA(Non Stand Alone)の開発が数多く行われてきましたが、直近は、4G機器に依存しない5G専用のSA(Stand Alone)の設備・機器の開発に注力しています。つながりやすく安定した通信を実現するとともに、5Gエリアの早期拡大、5G環境の高品質化のために、さまざまな機器や機能の開発を続けています。

検証: 5Gを“快適”に使用いただくために
開発の次のステップである検証部門は、機器として選定されたハードウェアや、カスタマイズされたソフトウェアが、お客さまへ提供するうえで十分な性能のものであるかを検証する役割を担っています。
最初はクローズドなラボでその機能・性能をチェックし、次の段階では小規模のエリアにおいて、お客さまが実際に利用する環境に近い状況で機能・性能をテストします。また、運用が開始された段階で何らかの課題が発生した場合には、ネットワークの設定を変えるなどして早期に問題点を解決するという業務も担っています。
検証項目は膨大な数に及びます。機器によっても異なるうえ、お客さまが実際に利用するであろう時間帯、場所にもよるため、さまざまなパターンで検証を行います。また、単につながればよいというものでもなく、「お客さまが快適に使用できる」ということが、最も重要視される条件となります。この検証工程を惜しまないことにこだわり取り組んでいます。
5Gエリアの通信品質向上を図る──「品質管理」
5Gのエリア拡大は、企画、開発、検証、設計、工事、品質管理、運用といった段階を踏んで進んでいきます。ここでは、品質管理について紹介します。
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ビッグデータ分析と地道な現地調査から始まる品質管理
品質管理の工程では、5Gエリアにおける音声通話やデータ通信の品質、電波状況を調査し、品質の維持・改善を行います。ビッグデータの活用や実際に足を運んで電波状況の調査を行い、お客さまがストレスなく快適に通信できる環境を維持していくというのが大きな役割です。
KDDIは、5Gエリアを拡大するにあたってお客さまの生活動線を意識し、主要なターミナル駅周辺の商業地域で5Gエリアを展開するとともに、そこへ延びている鉄道路線のエリア化を進めています。品質管理の工程においても、通勤や通学での移動中や商業地域で過ごしていても5Gが途切れることのないよう日々改善に取り組んでいます。
お客さまの移動状況、人の流れは日々変化するため、通信品質の維持・向上のためには常にメンテナンスを行う必要があります。品質管理の工程は、大きく「現状把握」「分析」「改善」「事後確認」の4つのステップに分けられ、サイクルを回しています。
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① 現状把握
お客さまの利用状況をはじめとするビッグデータから、各エリアにおける5Gの電波状況を確認し、音声通話やデータ通信の品質を判断します。詳細な状況を確認するためには、実際に現地に行って現状を把握します。
② 分析
品質向上の余地があるエリアに対して、au基地局のアンテナの方向や角度を変えたらどうなるか、設備のパラメータを調整するとどうなるかといったことをシミュレーションします。
③ 改善
分析結果をもとに、au基地局のアンテナの向きの調整や、設備のパラメータ変更を行います。
④ 事後確認
実際に通信品質が改善されたかビッグデータの確認を行い、現地で体感品質のチェックを行います。改善しきれない場合、新たな基地局を建設する必要性について、企画・設計部門にフィードバックを行っています。
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あるエリアの品質改善をするとき、一度行えばそれで終わりというわけではありません。
新しいビルの建設や商業施設ができて人の流れが変わることで、通信品質が変化することもあります。また近年のコロナ禍によって、お客さまの移動状況、人の流れは変化しています。あらゆる状況や人々の動向を鑑みて改善を繰り返していくことで、安定した通信品質を維持し続けることができます。
スタジアムやイベント会場などでの“予防的”品質管理
品質管理のもう1つの側面として、スタジアムやイベント会場などで一時的に多くのお客さまが集まる場合でも、5G通信の品質を保つことが求められます。近年では5Gを活かしたコンテンツをイベント会場で同時に展開することも頻繁になってきました。会場の規模や参加人数などを推測し、これまでの経験や知見に基づいて、あらかじめ臨時の車載基地局を設置するなどして、お客さまに快適にスマートフォンをご利用いただく環境を作っています。
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膨大なビッグデータの分析とともに、地道な現地調査、知見に基づいた予防的改善などによって、5Gエリアの通信品質は日々維持・改善されています。