2023.12.20

地域のモビリティ活性化に貢献したい―KDDIの思い

  • 位置情報測位技術
  • NFCタグ
  • キャッシュレス決済

地方自治体や事業者とともに観光交通DXを推進

KDDIはスマホタッチ支払いの仕組みを活用した観光交通DXを推進しています。

「それぞれの地域でしかできない体験を、自治体や事業者の皆さまと一緒になって提供していくことで、観光交通DXに関わるステークホルダー(関係人口)を拡大していこうとしています」と話すのは、KDDI地域共創推進部の手塚喬之です。

KDDI株式会社 経営戦略本部 地域共創推進部 手塚喬之KDDI株式会社 経営戦略本部 地域共創推進部 手塚喬之

発端となったのは、2020年2月から3月にかけて沖縄県で実施した観光型MaaS(Mobility as a Service:次世代交通サービス)の実証実験です。沖縄の観光情報紹介にMaaSの機能を追加した「沖縄CLIPトリップ」というスマホアプリで、興味をもった観光記事からそのまま複数の交通手段(マルチモーダル)にまたがるルート検索が可能で、さらに乗車したモノレール(ゆいレール)やタクシーのキャッシュレス決済まで行えます。

「この実証実験が同年10月からの愛媛県での観光型MaaS実証実験につながり、徳島県(2021年、2022年)、岡山県(2023年)でのスマホタッチ支払い実証実験につながっていきました」(手塚)

両備バス(岡山県)の実証実験で設置されているスマホタッチ支払い両備バス(岡山県)の実証実験で設置されているスマホタッチ支払い

キャッシュレス決済の新たな選択肢

KDDIが観光交通DXへの取り組みを開始した背景には、高齢化や人口減少に伴う地方の衰退にあります。地域の足を支えるバスなどの公共交通機関の利用者は減少し、路線を維持することも困難な深刻な状況です。この局面を打破する一つの方法として、サービスの利便性を向上できるスマホタッチ支払いが発案されました。

都市部で暮らす人であれば、すでに広く普及しているプリペイド型の交通系ICカードを思い浮かべることでしょう。とはいえ地方では、そういったICカードシステムの導入は容易ではありません。

「チャージを行う券売機や車載ICカードリーダーを導入する初期費用はもとより、その後の機器のメンテナンスやリプレースなどシステムの維持にも多額のコストがかります。地方の中小規模の交通事業者にとって投資負担は重く、『採算のとれる持続可能なサービスとなりえるのか』という懸念があり、どうしても二の足を踏んでしまいます」(手塚)

KDDIが地方自治体や事業者とともに実証実験を進めているスマホタッチ支払いは、そうした既存の仕組みの課題を解決するシステムです。

「利用者は、あらかじめクレジットカードを登録しておくことで、事前チャージ不要でキャッシュレス決済ができるようになります。また、事業者にとっても、既存のICカードシステムよりも低コストなため、導入検討がしやすくなるでしょう」(手塚)

また、このスマホタッチ支払いのシステムの対象は、公共交通機関の乗車料金支払いだけでなく、地域の商店街や観光施設などと連携したクーポンの発行など、地域経済全体を活性化させていくための基盤としても期待されています。