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通信技術が人命救助に役立つ。災害時にスマートフォンの位置を推定するシステム

2023年3月2日に実施した「2023 KDDI災害対策訓練」では、新たな技術を使った災害対策の取り組みを公開しました。今回はその中でも、スマートフォン(以下、スマホ)の通信の仕組みを活かした捜索支援の取り組み「携帯電話電波捕捉システム」について詳しくご紹介します。

通信が途絶した被災地で、いったいどうやって通信の仕組みを使った捜索支援が可能になるのでしょうか。

●被災地で救助を待つ人を捜索するために

日本では、毎年のように土砂災害や地震による被害が発生していますが、被災地での人命救助活動にはさまざまな困難が伴います。例えば、倒壊した家屋やがれきの下に救助を待つ人がいるかもしれないのに、足場が悪くてすぐに駆けつけることができない。災害現場では、そのような事態が起こることが少なくありません。

元々、KDDIではヘリコプターやドローンに超小型基地局を搭載し、災害時における通信途絶エリアを解消するための「航空機型基地局」の実験に取り組んできました。しかし、実際の災害において被災者はauのお客さまだけとは限りません。航空機型基地局の知見を活かし、より多くの人命を救える支援システムが作れないかー。


「この仕組みを使うことで、助けを呼ぼうにも身動きが取れず、スマホも通じない場所に取り残された人の捜索を支援することが期待できます」システム開発をリードした運用管理部エキスパートの鈴木崇之は、こう話します。

●スマホが発する電波で捜索支援、ドローンやヘリコプター、ハンドヘルドでキャッチ

なぜ、スマホの通信圏外場所に取り残された人を捜索できるようになったのか。この捜索方法は、人がスマホを常に持ち歩くようになったからこそ可能になったと鈴木は説明します。

通常、スマホは常に電波を発しており、その電波に乗せられた信号を基地局が受信し、さまざまな処理を経て通信サービスを提供する仕組みになっています。KDDIが開発した携帯電話電波捕捉システムは、基地局機能等を備えており、スマホが発する電波をキャッチし、要救助者の居場所を推定するというもの。スマホの近くには人がいる可能性が高いことを前提とした捜索方法なのです。

本システムの概要本システムの概要

スマホと携帯電話電波捕捉システムの信号のやりとりを捜索支援に使うため、KDDIは2つの機能を実装しました。

1つは、通信キャリアを問わず、スマホの位置を推定するための機能です。この機能を搭載したことで、音声通話やデータ通信はできないものの、auのスマホだけでなく、他の通信キャリアのスマホについても位置を推定することが可能になりました。

もう1つは捜索範囲を絞り込むための機能です。今回のシステムで使っている携帯電話サービス向けの電波は、広範囲に飛来する性質を持っています。そのため、これをそのまま救助に使うと、せっかくスマホの電波をキャッチしても、広いエリアのどこにあるかを推定するのが難しくなってしまいます。

こうした課題を解決するため、このシステムには広角と中角、狭角の3種のアンテナを用意しています。このアンテナをヘリコプターやドローン、ハンドヘルドごとに使い分けることで、半径数キロメートルから数十メートルの範囲でスマホの位置を推定できるようになりました。

本システムを搭載したドローン本システムを搭載したドローン
本システムの一式本システムの一式

2023年1月には、この試作機の実証検証を鹿児島県の上甑島で実施。携帯電話電波捕捉システムを実装したヘリコプターやドローン、ハンドヘルドで、地中に埋まったスマホの検知と位置の推定が可能なことが確認されました。

実証の様子実証の様子

●山岳地域の捜索支援に期待

携帯電話電波捕捉システムは警察などの救助機関にも関心をいただいており、鈴木によれば、実用化を望む声も挙がっているといいます。

「山岳における遭難件数は増加傾向にあり、令和4年では3000件も発生しています。山岳地域では携帯電話のサービス圏外であることも多く、あてもなく探すより、手がかりになる情報があれば、捜索活動に役立つのではないか、との期待の声もいただいています」

山岳救助での活用については、ある救助機関とヘリコプターを使った運用性検証を行う計画を進めています。

「人命救助活動は一刻を争う事態の連続なので、早く有用性を示し、1人でも多くの命を救うことに貢献することができたらと思っています」

本来、災害時に通信が途絶し、孤立してしまった集落の通信を復旧させるために開発された航空機型基地局が、本来の役割を超えた領域で災害対策に貢献する。KDDIはこれからも技術を使って災害対策の新たな可能性を切り開きます。

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